今この状況で夜会に出席すれば、おそらくは、こうなるだろう……と、私が予想していた光景が、実際に目の前にあった。

 貴族らしくあからさまにはしないけれど、遠巻きにしていて誰も私には近付いて来ない。嘲るような微笑に、ひそひそと小声で語られる悪意ある何か。

 親友と言えるほどに仲が良かった友人、ブラント伯爵令嬢クラウディアを裏切った性格の悪い女。そんな風に、噂をされているはずだ。

 彼らにとっては、噂話が真実でなかったとしても、良いのだ。きっと……自分たちが面白ければ、それで良いのよ。

 私の実の両親が亡くなっていることも、皆が知っている。代理人である叔父も、祖父の血が流れ傍流の貴族とは言えるものの、私生児であるために継承権を持たない。

 私は確固たる後ろ盾も持たない、いわば鎧を纏わないままに戦場にまで出て来てしまっているのだ。無数の嘲りの矢は肉を貫き、その奥にある心までも傷つける。

 だとしても……耐えるしかない。

 私はオブライエン侯爵家唯一の継承権を持つ、法定相続人。