「レティシア様は、俺にこういう場所で食事を出来て楽しいと言ったんだ。望みを叶えたお礼に、感謝の言葉を掛けられるのは、おかしいことでもないだろう」

 小さく切り分けてくれた肉を食べてみれば、本当に美味しかった。

「ふふ……本当に。ここに居ると、なんだか、嫌なことも忘れてしまうわね」

 私はため息混じりに言い終わってから、口に手を当てて、愚痴をこぼしてしまったことに気が付いた。

 ……いけない。彼らには、何も関係ないことなのに。

「あの……何か、嫌なことがあったんですか? 僕らでも力になれるかもしれませんし、良かったら何があったか、言ってみてください」

 ヴァレリオはいつの間にか頼んでいた二杯目の酒を、ウェイトレスから受け取りながらそう言った。

 あの大きな杯には一杯だけでも、かなりの量のお酒が入っていそうなのに……冒険者である彼らは、私がこれまで会ったことのないほどに凄まじい酒豪のようだ。