これまでに静かに食事を取ることが礼儀作法であるとされた場所でしか食事をしたことがなかった私には、とても新鮮に思える場所だった。

「ええ。これで……少しは、気晴らしになると良いんですが」

「……ありがとう。イーサン。食事に、誘ってくれて」

 私は事情を知ってここへと誘ってくれた彼と目を合わせて、感謝して微笑んだ。自ら発光しているかのような不思議な緑の目は細まり、私へと微笑みかけた。

 そこで、また胸が高鳴ったので、私は慌てて両手を心臓の上に当てた。

 え? 何。待って……この人は、冒険者なのよ。

 優しくされたからって、浮かれている場合ではないわ。しっかりしなさい。レティシア……唯一の法定相続人である私が、冒険者と恋に落ちるなんて、決して許されないのだから。

「おいおい。イーサン……俺にあんな事を言っておいて、お前はどうなんだよ。目の前でそうして妙な空気出すのはおかしいだろう」

 ジョセフィンはまた面白くなさそうに言ったので、大皿料理を取り分けて私に渡してくれたイーサンは肩を竦めた。