「ジョセフィン。いい加減にしろよ。レティシア様はお前が手を出して良い相手ではない」

「おい。それは、レティシア様が選ぶことだろう? そうですよね? レティシア様」

 イーサンが真面目な表情で諫めるように言ったので、ジョセフィンは微笑んで肩を竦めた。

 これを……どう答えて良いのか、困ったわ。ジョセフィンは見た目の通り女性に慣れた軽い調子だし、彼らはこれから先、この国に居住するわけでもない。

 だから、私だって何を言っても本気ではないとわかってはいるけれど……場の雰囲気を壊さないような、上手い返しが思いつかないのだ。

「おいおい。ジョセフィン。僕らは命が危険なクエストに挑むための安全策としてセーブポイントを作成して、選ばれてしまった彼女にはお願いしている側なのだし、そんな風に困らせるようなことをするなよ」

 可愛らしいウェイトレスから酒がなみなみと注がれた杯を受け取っていたヴァレリオは、眼鏡を直しながらそう言った。

「いや、というか……わかったよ。そうだよな。揶揄って、良い方ではないよな。無理を言って受けてもらったのは、こっちだし。俺が悪かった。すみません。レティシア様」