邸ではシェフが私の好みに合わせて料理を作ってくれるし、こうして外で食べる時には、ほとんどお店のお任せで頼んでしまうからだ。

 こんな風に個別に料理を選んだことは、今までになかった。

「おい。レティシア様が戸惑っているだろう。貴族には、こういった店の料理はわからない。俺が代わりに頼むよ……それで、よろしいですか?」

「あ……はい。ありがとうございます……」

 テーブル席の隣に座って言るイーサンにそう問われたので、私はほっと安心して頷いて彼にメニュー表を渡した。

 書かれている主材料もどんなものなのかわからないし、どういった完成品が出て来るのか想像もつかない。

「へえええ……なんだか、この二日夜に短時間会いに行っただけなのに、イーサンとレティシア様、すっごく仲良さそうじゃない? 俺も一緒に行きたいって言ったのに、ズルいわ。イーサン」

 ジョセフィンは面白くなさそうにそう言ったけれど、イーサンは偶然色々と事情を知ってしまい、私に詳しい話を聞きに来たかっただけのように思う。

 けれど、イーサンはそういった私の事情を、他の二人にも話してないようだった。