「レティシア、様は、どうしてあの時、泣いていたんですか。すみません。紳士的に見なかった振りをするべきかと思ったんですが……どうしても、気になってしまって。言いたくなければ、言う必要はありません」

「それは……あの」

 思わぬイーサンの言葉に、私は戸惑った。

 ここでどう言うべきか、どう反応すべきか。知り合ったばかりの彼に伝えるには、私の状況はあまりに私的過ぎるような気がして。

 その時、扉を叩く音がして、続いて大きな声が響いた。

「……レティシア? 居るんだろう?」

 ああ。ジュス叔父様だ! メイドであれば、また後にしてもらうところだけと、流石に彼を無視してしまう訳にはいかない。

 焦った私は咄嗟に身振りで、イーサンにベッドの陰に隠れるように指示をした。

 彼の大きな姿が隠れたことを確認して、深呼吸をすると、扉を開けることにした。

「……体調が悪いと聞いたが、大丈夫なのか」

「いえ。大丈夫です。何かありましたか?」