あ……そうよ。いけない。余計な事情を聞かれて言葉に困ってしまう前に、ここから逃げなければ。

 彼らの目的はわからないけれど、私の方は泣いている姿を誰にも見られたくなくて、ただここに隠れていただけだもの。

「あ……お恥ずかしいわ。どうか、私のことはお忘れください」

 私は手の甲で目元の涙を拭き、ここに篭もる際に苦労してなんとか収納した、ドレスのたっぷりとした裾を抱えて洋服箪笥(クローゼット)から出た。

 彼ら三人はその動きに反射的に場所を開けてくれて、隙間を私は早足で逃げるように歩き出した。

 彼らは私のことを探して来たわけでもないみたいだし、追い掛けてまでは付いて来ないはずよ。

 本当に……驚いたわ。

 まさか、置かれた家具には布を掛けられたまま、放置されているような……無数あるうちの一つ、長く使われていない城の客室へ、誰か来るだなんて。

 ……しかも、まるで中に何かがあると確信しているかのように、洋服箪笥(クローゼット)を開けたわ。

 ただの偶然だとは、思うけれど……なんだか、不思議よね。