……そうはわかりつつも、この人の存在は、私にとってどうしても受け入れがたいのだ。

「……申し訳ございませんが、私の結婚相手については、私に選ぶ権利があるとお聞きしています。それは、ジョス叔父様も認めておられることと思いますが」

「だから、従兄弟のドナルドを選べば良いんだよ! あの子だって、貴族の血が流れていることに間違いないだろう! 何度、これを言わせるつもりだい!」

 ご機嫌をとるように笑顔だった顔が醜く歪み、突然甲高い声で怒鳴ったので、私を出迎えるために近くに居た使用人たちは一斉に顔を伏せた。

 私は無言のまま、豹変した彼女を冷静に見ていた。

 このように怒鳴られることはこれまでに何度も何度もあったことなので、特に取り乱したりもしない。

 両親が亡くなってしまい、唯一正当な継承権を持つ私の後見人として、数少ない近い肉親である叔父夫婦はオブライエン侯爵家へとやって来た。

 その時、幼かった私には、そんな彼らを追い出すことが出来なかったし、彼が祖父の息子であることは間違いなので、親戚たちも口を出せなかった。