セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

 ヴァレリオとジョセフィンは、違う馬車に乗っている。なんでも、自分たちで馬車賃を出して良いから一緒の馬車は嫌だと言ったのだ。

「レティシア……そろそろ疲れましたか?」

「いいえ。大丈夫よ」

 私はヘイスター王都のオブライエン侯爵邸でこれまでの生涯のほとんどを暮らし、旅行なんてしたこともなかった。

 だから、荷造りをしたり長距離馬車に乗ったり、何もかもが新鮮な驚きに満ちていた。

 イーサンはとても心配性で旅慣れない私が車酔いをしていないかが気になり、何度も尋ねてくれるのだ。

「ヘイスターの国境は越えた……あとは、なだらかな道になるから、大丈夫だよ。レティシア」

 どうやらゴールデン王国に入ったらしい。それは、彼の父であるランチェスター辺境伯が治める領地へと帰ってきたということだ。

 本当は、イーサンは既にSSランク冒険者になって、悠々と帰っていただろうに……私のことで、彼にはずいぶんと時間を使わせてしまった。

「……ごめんなさい。私のせいで」

 ゴールデン王国へと向かう馬車の中で、隣に座るイーサンと見つめ合い、どうしても涙がこぼれてしまった。