「はい。どうやら、この魔術書を使ったことで作成されたセーブポイントは、レティシア様のようでして……うら若き乙女にこんなことをお願いするのもおかしな話なのですが、僕たちが昇級試験に挑んでいる間、夜に一度それまでをセーブをしに会いに行っても、よろしいでしょうか!?」

「はっ……はい」

 ヴァレリオの勢いにのまれて、思わず返事をしたけれど、後からしまったとは思った。

 だって、まだこうして会ったばかりで名前くらいしか知らないのに、夜に会いに来ることを許すなんて……あまりにも、軽率だったかもしれない。

 ……いえ。そういった邪(よこしま)な気持ちを持っている人たちではないと、わかってはいるけれど。

「……ありがとうございます!」

「レティシア様は、女神だよ! はーっ……これで、よっぽどのことがない限りは死なないし、何が待っていようが恐れることはない。助かるぞー!」

「……すみません。ありがとうございます」

 三人三様に感激した様子を見て、私はほっと息をつき、まあ良いかと思った。

 一日のどこかで……無関係な彼らと短時間でも会って話すことが、少しは気晴らしになるかもしれない。

 だって、今の私は袋小路に追い込まれてしまい、為す術なんて思いつきもしないのだから。