セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

 ジョセフィンはそう言い鋭い視線を、この『レンガ亭』の主らしき、厳つい顔を持つ男性へと向けた。

 にこにこと愛想の良さそうな、恰幅の良い男性だ。

「あの店主が、毒を盛ったとは僕は考えられないな。動機もなければ、不利益しかない」

 ヴァレリオは肩を竦めてそう言い、ジョセフィンは不思議そうな表情を浮かべた。

「どういうことだよ?」

「僕たちの滞在費は、前金があったにせよ、ほぼ後払いだ。金を貰っていないのに、殺しても彼には利益がない」

 ヴァレリオが主張した意見は、もっともだった。彼らがこの『レンガ亭』に滞在して、ひと月以上経つし、多額のお金を貰っていない。それなのに、殺す動機が見えない。

「もしくは……損をする……それ以上の金を、報酬として貰ったか」

 淡々としたイーサンの言葉を聞いて、私たちは彼に注目した。

 ……宿屋の店主が三人分の滞在費と、毒殺に関する報酬を貰えるとするならば……それは、単なる平民であったり、冒険者の逆恨みのような……そういう理由ではなさそう。