ベッドに横たわった人物を見て、私は息をのんだ。薄暗い室内の中でも見て取れる、とんでもない大怪我だ。身体中傷ついた彼は、私のことを認識したようだ。

「……っ……」

 彼は瀕死状態と言って、差し支えない。もしかしたら、もう……声が出ないのかもしれない。

「ヴァレリオ。ヴァレリオ。お願い……私に触れて『ロード』を使って……!」

 私は彼の元へ駆け寄り、包帯の巻かれた右手を取った。

 虚ろな目を見れば使われている薬の効果で、意識が朦朧としているのかもしれない。

「ああ。ヴァレリオ……イーサンやジョセフィンを救うためには、貴方だけが頼りなの。お願い……お願いよ。ヴァレリオ」

 涙がこぼれてしまった。部屋の中で待ちぼうけをしていた私が、もっと早くにここに来ていたら。

 ヴァレリオの榛色の瞳の中に、その時、光が灯ったように見えた。私の手を握った力が、強くなったような気も。

「ヴァレリオ……?」

 彼の口は小さく開き、その時に、微かな声であの呪文を唱えた。

 いきなり視界は明るく変わって、自室の中で、イーサンと私は見つめ合っていた。

「イーサン!」