私は正面入り口にたむろする彼らの目から逃れるために、白い建物の裏口を探すことにした。

 路地裏は灯りが届かず暗い。けれど、不思議と怖くはなかった。自分のすべきことが、明確にわかっているからかもしれない。

 いいえ。やり遂げなければならない事の重要性が高いからかもしれない。

 うすぼんやりと見える視界の中、私は裏口らしき扉を見付けた。時間的に当然かもしれないけれど、そこは鍵が掛けられていた。

 どうしよう……時間的にもう猶予は、残されていないのかもしれないのに。

 私は意を決して、扉をドンドンと叩いた。深夜だし、あまり良くないことだとは思ってはいるけれど……そんなことを構っている余裕はなかった。

「……お願いします! ここを開けてください!」

 全く返事はないけれど、とにかく懸命に叩くしかなかった。

 ここで引き下がるわけにはいかない。もしかしたら、三人の命が掛かっているかもしれないのだ。

「おい……! お前……何をしている!」

 遠くから声が聞こえて、何人かの男性がこちらに向かって来ている姿が見えた。おそらくは、私が危険だと思ったあの集団の内の何人かだと思った。