何日か前には考えられなかったくらい、私は夢のような生活を送っていた。緊張感のある抑圧されていた日々が終わりを告げて、のびのびと息をすることが出来る。

 ……ああ。ドナルドから聞いた話によると、私はイーサンに出会わなければ、きっとあの生活から抜け出せなかったのだ。

 たとえ、オルランド様がどうしてもと望んだとしても、王族に嫁ぐ娘が純潔でなくて許されるはずもないのだから。

 夜毎、私の元に来てくれていたイーサンが居てくれて、私は救われた。


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 就寝前の準備を済ませた私は、いつものようにバルコニーから現れるイーサンを待っていた。

 もうオブライエン侯爵邸の正面入り口から堂々と現れても良さそうなものだけれど、気楽な冒険者生活を好む彼は、毎晩の訪問が仰々しくなるのは嫌だと言っていたので、私もバルコニーからで良いと頷いた。

 冒険者として日々を過ごしていることから分かるとおり、イーサンは自分が高位貴族であることを、あまり好んで居ないように思えた。

 私はイーサンを待つことには慣れていたし、待つのも楽しいと言えるくらいに、彼のことがもう好きになっていた。