すべて誤解だと騒いで否定しているようだけど、私本人といきなり一日の暇をもらった使用人の証言で、それは覆らないだろう。

「本当に……ようございました。お嬢様。よかったです」

 私の事をこれまでに守ってくれていたエーリクは、ハンカチで涙を拭いて胸に手を当てて頭を下げた。

 彼は私の亡き父に忠誠を誓い、それを今も守ってくれている。


◇◆◇


「……ようやく、レティシア様に話すことが出来たのか。僕は早くしろと言ったのに」

 前に彼らと共に食事をした酒場でヴァレリオは呆れたようにそう言い、イーサンは苦笑いをしていた。

「そうなんですよ。レティシア様。実はヴァレリオが問題としていたのは、イーサンが恋愛にかまけて、惚けていることではありません。貴女に自分の身分を明かし、正式に求婚するべきだと……そう言っていたんです」

 三人でパーティを組んでいる彼らは、もちろんのこと、イーサンが誰であるかという事を知っていたのだ。

「まあ……そうだったのね」