「あ。レティシア……大丈夫ですか。すみません。どうしても、許せなかった……それに、この傷は」

 私へと向き直ったイーサンは、頬の殴られた傷を見て悲しそうな表情になった。そっと頬に手を当てると彼の緑色の目は、不思議と輝いた。

 精霊が棲むという緑色の目は内から、じんわりと光り綺麗だった。おそらくは、森の精霊の力を借りて、回復魔法を使っているのだろう。

「あ……イーサン。貴方の目、綺麗」

 本当に、綺麗だった。

「いや、その……いいえ。お褒めいただき、ありがとうございます。どうですか? まだ、痛みます?」

 イーサンはこんな状況で何を……と、言いたかったのだと思うけれど、私の頬に軽く手を当てて微笑んだ。

「凄いわ。痛みがなくなった……ありがとう。イーサン」

 私は微笑んでそう言い無言のまま顔を歪めたイーサンに、強い力で抱き寄せられた。

「すみません。遅くなって……けど、良かった」

 イーサンの声は、震えていた。おそらくは、間に合って良かったと、言いたかったのだと思う。

 私がドナルドの餌食になる前に、間に合って……良かったのだと。