「人は、恋をすると欲張りになる」

「そう、なの?」

「そうだよ……今の俺が、そう」

私を見下ろしながら甘い甘い瞳を柔らかく細めて、そう囁くの。私を癒して、慰めて、とことん甘やかすヒト。

そんな目で見つめないで。そんな風に触らないで。

あなたは甘いお菓子のよう。やめたいのに、やめられない。だめだと思う程に、食べたくなる。あなたに会えないと本当に震えてしまうの。


『禁断の果実』


そんな言葉が頭にぼんやりと浮かんで消えた。

「好きだよ」

同じ言葉を返せない私に、切なそうな目を向けるあなたに私の胸は、きゅう、と鳴く。こんな関係はダメだとわかるのに。こんなことは続けられないと思うのに。

「もう会わない」

その一言がどうしても言えなくて。

「終わりにしよう」

なんて、きっとあなたは言わないから。

私は静かに瞳を閉じる。あなたの唇が触れることを知っていて。全てはきっと、さよならの理由が見つからないせい。