***
庭園の準備が整い、テーブルごとにケーキスタンドが置かれていくと徐々に招待客の方々が乗る馬車が屋敷前に到着し始め、ルイやメイド達に案内されオーリン家の敷地内に入ってくる。そんなお客様方をアンリはお母様と二人、並んで迎え入れていた。
しばらくお母様に続いて挨拶をしていると、見覚えのある二人組が仲良く腕を組み敷地内に入ってくるのが見える。
いつも通り髪をおさげにしているフルールも今日はアフタヌーンドレスを身に纏い、そんなフルールの隣を歩くカリマーはブラウンのスーツ姿だ。
アンリを視界に入れると、ヒールを履いているにもかかわらず小走りで駆け寄ろうとするフルールと、そんなフルールを慌てた表情で引き留めるカリマー。そんな二人を見ていたアンリはクスリと笑みをこぼす。やっぱり二人は相変わらず仲良しだ。
「アンリちゃん、今日はご招待ありがとうございます。ドレス姿のアンリちゃんもとっても可愛らしいのです」
「フルール、さすがに今日は抱きつきたい衝動は我慢するんだよ」
「分かってるもん。私にだって、それくらいの常識はあるもん」
「フルール先輩、カリマー先輩、今日は来てくれてありがとうございます。フルール先輩もドレス、とても良く似合っていますね。とっても可愛いです」
「えへへ、ありがとうございます」
フルールとカリマーと話していると他のお客様に挨拶をしていたお母様がアンリ達の元にやって来て微笑ましそうな優しい眼差しを浮かべる。
「あら、貴方達は生徒会のお二人ね。ごきげんよう」
「オーリン様、ご機嫌麗しゅう存じます」
「ご無沙汰しております。本日はご招待、ありがとうございます」
「二人とも、いつもアンリと仲良くしてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ。アンリさんにはいつもお世話になっています」
「今日は是非、楽しんでいってね。アンリ、もうここは良いからお二人を席に案内してあげて」
「うん、分かったわお母様」
お母様はアンリの返事を聞くとメイドに連れられ新たにやって来たお客様を出迎えに向かう。
アンリは二人を連れ、みんなの待つテーブルに戻るとアンリの隣にフルールを、その隣にカリマーを案内する。
「お二人はこちらの席におかけ下さい」
「私達までみなさんの輪に入っちゃって良いんですか?」
「あ、会長さんと副会長さん!お久しぶりです」
「お二人が良ければ、今日はみんなでお話出来たらなと思いまして」
「そういう事ならフルール、アンリさんの好意に甘えさせてもらおうか」
「うん!」
フルールとカリマーは仕事をしている時は堂々としているが、普段は内気な性格で人見知りな節がある。だからこそ、最初は緊張していたようだが、カリマーと打ち解け仲良くなったフレッドや生まれ持った人懐っこい性格のミンスが間を取り持ってくれたおかげで、気がついた時にはすっかりフルールとカリマーもこの場に打ち解けているのだった。
「みなさん、私主催のお茶会に来て下さり、ありがとうございます。本日はお日柄も良く、晴天に恵まれ喜ばしく思います。そして…」
招待客が揃うとお母様の挨拶の後、お茶会が始まった。お茶会と一言で言っても、特に堅苦しいモノでは無く、ケーキや軽食、紅茶を楽しみながら、ゆっくりとお話をするのがメインだ。そして私が招待したクイニーやミンス、ザックにフルールにカリマー以外の招待客は全員、お母様の友人や親しい人達だ。
お母様は色々な席を回り、その場その場で会話を弾ませているようだが、アンリは席を立つこと無く、みんなとの会話を楽しんでいる。それはアンリ自身が人見知りだからという事もあるが、お母様から事前に「せっかくの機会なのだから、お友達と楽しい時間を過ごしなさい」と許可されての事だ。
「こんな風にみんなで集まって、ゆっくりお茶を楽しめるなんて思わなかった。みんな、今日は来てくれてありがとう」
「どうしたの?アンリちゃん」
「こうしてみんなでお茶を飲んだりケーキを食べながらお話出来るって幸せだなって思って」
「なに言ってんだ。それも全てお前自身が掴んだ事だろ」
「そうだな。クイニーとは幼馴染だったとはいえ、ミンスや私と仲良くなったのはアンリ様自身が私達と仲良くなろうと心を開いてくれたからだ」
そう言われて思い出すのは、暗璃がこの世界でアンリとして目覚めた日の事だ。
いきなり見知らぬ部屋で目を覚ましたと思ったら、自らを執事だと名乗るフレッドと出会った。そして何も分からないまま、いきなり学園の入学式に出席することになり、目の前に現れたのは幼馴染だというクイニー。
初めて会ったとき、クイニーは威圧感が強く、思った事を良い意味でも悪い意味でも全て口に出すタイプという事もあって、怖い印象で正直に言えば苦手意識すら芽生えていた。
そして次に会ったのはミンスだ。ミンスは教室でアンリが孤立している際、声を掛けてくれた。そして持ち前の愛嬌の良さや明るい性格のおかげで、あっという間に打ち解け、仲良くなったのだ。
そんなミンスに勢いのままザックを紹介して貰った。ザックは初め、アンリを伯爵家のご令嬢という看板を気にして堅苦しい印象だった。
しかし、そんな彼らと日々を過ごすようになり、クイニーは一見すると怖い印象だが、実は不器用なだけで友達想いの良い男だった。そして子犬のようだと常々思っていたミンスは可愛いだけでなく、時には男らしい一面もある男の子だ。ザックも一緒に過ごしてみると性格や考え方もバラバラなアンリ達を陰でまとめ、時に見守ってくれる面倒見が良い兄気質の優しい人だった。
そしてそんな彼らが居なければ、こんなに楽しい日々を過ごす事は出来なかっただろう。
「アンリちゃん、私とカリマーの事も忘れないで下さいね!私達がこうして今みなさんと一緒に居られるのはアンリちゃんのおかげなんですから」
「アンリさんが僕やフルールを受け入れてくれたこと、感謝しています」
カリマーと出会ったのは選択科目である演劇の授業だ。初対面では大人しく弱々しい雰囲気の人だなと思っていたが、舞台に立つと人が変わったように役に入り込む。そして生徒会室に初めて呼び出された際、眼鏡を掛け生徒会長としてアンリを迎える人物がカリマーと同一人物だと気づけなかったほど、良い意味でオンとオフが激しい人だ。そしてアンリがフルールと親しくなった事で、よりカリマーと言葉を交わすようになった。
フルールはアンリとザックが学祭の実行委員に選ばれた事をきっかけに出会った。初めて姿を見た時は副会長としてキリッとした瞳でアンリ達の前に立っていたため、真面目な女子生徒だと思っていた。だが話してみると、可愛いモノが大好きなようで、可愛いモノを見ると抱きつきたい衝動を抑えられなくなるという一見変わった癖があり、最初は驚いたが、そんなところもフルールの可愛いところだ。
なによりフルールとアンリはお互いにとって初めてできた女の子の友人でもある。
そしてそんなカリマーとフルールは互いを誰よりも大切に想い、支え合っている素敵なカップルだ。
本当に私は良い友達に恵まれている。この世界に来るまで、あんなにも窮屈で灰色の日々を過ごしていた私がこんな風に大切な友達や家族に囲まれて笑える日が来るなんて想像もしていなかった。
「私、みんなに出会えて幸せ」
満面の笑みで笑ってみせれば、そんなアンリを見ていた彼らもそれぞれ笑みを返してくれる。
庭園の準備が整い、テーブルごとにケーキスタンドが置かれていくと徐々に招待客の方々が乗る馬車が屋敷前に到着し始め、ルイやメイド達に案内されオーリン家の敷地内に入ってくる。そんなお客様方をアンリはお母様と二人、並んで迎え入れていた。
しばらくお母様に続いて挨拶をしていると、見覚えのある二人組が仲良く腕を組み敷地内に入ってくるのが見える。
いつも通り髪をおさげにしているフルールも今日はアフタヌーンドレスを身に纏い、そんなフルールの隣を歩くカリマーはブラウンのスーツ姿だ。
アンリを視界に入れると、ヒールを履いているにもかかわらず小走りで駆け寄ろうとするフルールと、そんなフルールを慌てた表情で引き留めるカリマー。そんな二人を見ていたアンリはクスリと笑みをこぼす。やっぱり二人は相変わらず仲良しだ。
「アンリちゃん、今日はご招待ありがとうございます。ドレス姿のアンリちゃんもとっても可愛らしいのです」
「フルール、さすがに今日は抱きつきたい衝動は我慢するんだよ」
「分かってるもん。私にだって、それくらいの常識はあるもん」
「フルール先輩、カリマー先輩、今日は来てくれてありがとうございます。フルール先輩もドレス、とても良く似合っていますね。とっても可愛いです」
「えへへ、ありがとうございます」
フルールとカリマーと話していると他のお客様に挨拶をしていたお母様がアンリ達の元にやって来て微笑ましそうな優しい眼差しを浮かべる。
「あら、貴方達は生徒会のお二人ね。ごきげんよう」
「オーリン様、ご機嫌麗しゅう存じます」
「ご無沙汰しております。本日はご招待、ありがとうございます」
「二人とも、いつもアンリと仲良くしてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ。アンリさんにはいつもお世話になっています」
「今日は是非、楽しんでいってね。アンリ、もうここは良いからお二人を席に案内してあげて」
「うん、分かったわお母様」
お母様はアンリの返事を聞くとメイドに連れられ新たにやって来たお客様を出迎えに向かう。
アンリは二人を連れ、みんなの待つテーブルに戻るとアンリの隣にフルールを、その隣にカリマーを案内する。
「お二人はこちらの席におかけ下さい」
「私達までみなさんの輪に入っちゃって良いんですか?」
「あ、会長さんと副会長さん!お久しぶりです」
「お二人が良ければ、今日はみんなでお話出来たらなと思いまして」
「そういう事ならフルール、アンリさんの好意に甘えさせてもらおうか」
「うん!」
フルールとカリマーは仕事をしている時は堂々としているが、普段は内気な性格で人見知りな節がある。だからこそ、最初は緊張していたようだが、カリマーと打ち解け仲良くなったフレッドや生まれ持った人懐っこい性格のミンスが間を取り持ってくれたおかげで、気がついた時にはすっかりフルールとカリマーもこの場に打ち解けているのだった。
「みなさん、私主催のお茶会に来て下さり、ありがとうございます。本日はお日柄も良く、晴天に恵まれ喜ばしく思います。そして…」
招待客が揃うとお母様の挨拶の後、お茶会が始まった。お茶会と一言で言っても、特に堅苦しいモノでは無く、ケーキや軽食、紅茶を楽しみながら、ゆっくりとお話をするのがメインだ。そして私が招待したクイニーやミンス、ザックにフルールにカリマー以外の招待客は全員、お母様の友人や親しい人達だ。
お母様は色々な席を回り、その場その場で会話を弾ませているようだが、アンリは席を立つこと無く、みんなとの会話を楽しんでいる。それはアンリ自身が人見知りだからという事もあるが、お母様から事前に「せっかくの機会なのだから、お友達と楽しい時間を過ごしなさい」と許可されての事だ。
「こんな風にみんなで集まって、ゆっくりお茶を楽しめるなんて思わなかった。みんな、今日は来てくれてありがとう」
「どうしたの?アンリちゃん」
「こうしてみんなでお茶を飲んだりケーキを食べながらお話出来るって幸せだなって思って」
「なに言ってんだ。それも全てお前自身が掴んだ事だろ」
「そうだな。クイニーとは幼馴染だったとはいえ、ミンスや私と仲良くなったのはアンリ様自身が私達と仲良くなろうと心を開いてくれたからだ」
そう言われて思い出すのは、暗璃がこの世界でアンリとして目覚めた日の事だ。
いきなり見知らぬ部屋で目を覚ましたと思ったら、自らを執事だと名乗るフレッドと出会った。そして何も分からないまま、いきなり学園の入学式に出席することになり、目の前に現れたのは幼馴染だというクイニー。
初めて会ったとき、クイニーは威圧感が強く、思った事を良い意味でも悪い意味でも全て口に出すタイプという事もあって、怖い印象で正直に言えば苦手意識すら芽生えていた。
そして次に会ったのはミンスだ。ミンスは教室でアンリが孤立している際、声を掛けてくれた。そして持ち前の愛嬌の良さや明るい性格のおかげで、あっという間に打ち解け、仲良くなったのだ。
そんなミンスに勢いのままザックを紹介して貰った。ザックは初め、アンリを伯爵家のご令嬢という看板を気にして堅苦しい印象だった。
しかし、そんな彼らと日々を過ごすようになり、クイニーは一見すると怖い印象だが、実は不器用なだけで友達想いの良い男だった。そして子犬のようだと常々思っていたミンスは可愛いだけでなく、時には男らしい一面もある男の子だ。ザックも一緒に過ごしてみると性格や考え方もバラバラなアンリ達を陰でまとめ、時に見守ってくれる面倒見が良い兄気質の優しい人だった。
そしてそんな彼らが居なければ、こんなに楽しい日々を過ごす事は出来なかっただろう。
「アンリちゃん、私とカリマーの事も忘れないで下さいね!私達がこうして今みなさんと一緒に居られるのはアンリちゃんのおかげなんですから」
「アンリさんが僕やフルールを受け入れてくれたこと、感謝しています」
カリマーと出会ったのは選択科目である演劇の授業だ。初対面では大人しく弱々しい雰囲気の人だなと思っていたが、舞台に立つと人が変わったように役に入り込む。そして生徒会室に初めて呼び出された際、眼鏡を掛け生徒会長としてアンリを迎える人物がカリマーと同一人物だと気づけなかったほど、良い意味でオンとオフが激しい人だ。そしてアンリがフルールと親しくなった事で、よりカリマーと言葉を交わすようになった。
フルールはアンリとザックが学祭の実行委員に選ばれた事をきっかけに出会った。初めて姿を見た時は副会長としてキリッとした瞳でアンリ達の前に立っていたため、真面目な女子生徒だと思っていた。だが話してみると、可愛いモノが大好きなようで、可愛いモノを見ると抱きつきたい衝動を抑えられなくなるという一見変わった癖があり、最初は驚いたが、そんなところもフルールの可愛いところだ。
なによりフルールとアンリはお互いにとって初めてできた女の子の友人でもある。
そしてそんなカリマーとフルールは互いを誰よりも大切に想い、支え合っている素敵なカップルだ。
本当に私は良い友達に恵まれている。この世界に来るまで、あんなにも窮屈で灰色の日々を過ごしていた私がこんな風に大切な友達や家族に囲まれて笑える日が来るなんて想像もしていなかった。
「私、みんなに出会えて幸せ」
満面の笑みで笑ってみせれば、そんなアンリを見ていた彼らもそれぞれ笑みを返してくれる。

