***
「ついお話に夢中になってしまいましたね。フレッドさん、是非またお話しましょう」
「はい、もちろんです」
「ではお二人とも、お気をつけてお帰り下さい」
馬車が出発しても隣に座るフレッドは口角を上げ、どこか嬉しそうな表情だ。余程、カリマーとの会話に花が咲いた事が嬉しく、楽しい時間だったのだろう。
「よかったね、気の合うお友達が出来て」
「先輩のことを友達って言っても良いのかな」
「友達になるのに年齢なんて関係ないよ。私だってフルール先輩はもちろん、カリマー先輩の事もお友達だと思ってるし、フレッドだって年齢が違っても私とお友達でしょう?」
「アンリ…、それ本気で言ってる?」
それまで頬を緩めていたフレッドは途端に拗ねた表情を見せると、アンリの瞳をまっすぐに見つめる。
まさか気づかない間に何か変な事を言ってしまったのだろうか…。
「え?私、何か変な事言っちゃった?」
「僕達、お互いに気持ちが通じ合ったのに”友達”なの?」
「え?あ…」
揶揄うように珍しく意地悪な少年のような笑みを向けるフレッドを前にアンリの頬は真っ赤に染まる。
「アンリ、顔真っ赤。可愛いね」
耳まで赤くして真っ直ぐにフレッドの顔を見られないアンリと対照的に、フレッドは涼しい表情で微笑む。
これじゃあ私ばかりが動揺しているようで、悔しい。
話を変えるために思考を巡らせ、気になってはいたものの、なんとなく聞けずにいた事を思い出す。
「…そう言えば、この間の女の子ってフレッドとどういう関係だったの?」
フレッドは空気を変えるために話題を強引に変えたことに気づいているようだが、これ以上はアンリを揶揄おうとはせず質問に答えてくれる。
「図書館に行った時に僕がお話してたご令嬢のこと?」
「すごく楽しそうに話してたから気になって…」
アンリが自分の気持ちに気がつけたのは、図書館でフレッドがご令嬢と楽しそうに話している場面を目撃し、嫉妬したのがきっかけだ。あの時はフレッドが他の女の子の元に行ってしまったらという事ばかりを考えて詳しく知ろうとしなかったが、今思えばあの女の子は誰で、何をあんなにも楽しそうに話していたのだろうと気になってしまう。
「あぁ、あの時はアンリのことを話していたんだよ」
「え?私?どうして?」
「あの子、僕と同じ一年生らしいんだけど、学祭の舞台を見てアンリのファンになったんだって。だけどアンリに直接声を掛ける勇気は無かったから、普段アンリと一緒に居る僕に声を掛けて、オーリン様に素敵な舞台でしたって伝えて下さいって頼まれてたの。僕も色々あって、今の今まで伝言を頼まれてたことすら忘れちゃってたんだけど…」
「そうだったの?」
「そうだよ、だからあのご令嬢と話したのは僕もあの日が初めてだし、楽しそうに話しているように見えたのはアンリのことを話していたから。まぁそんな事実を知らなかったおかげで、アンリは嫉妬した勢いで気持ちを伝えてくれたんだよね」
「揶揄ってる…?」
「勘違いでも嫉妬してくれたおかげで両思いだって分かったんだし、僕は感謝してるんだよ」
両思いだと分かってからフレッドは肩の力が抜けたのか、時々こうしてアンリを揶揄ったりアンリが照れるような事をわざと言って、アンリが顔を赤くする姿を見ては楽しんでいる。
アンリがこの世界にやって来た頃、フレッドはアンリの執事だった事もありアンリの事を”アンリ様”と呼び、常に敬語で声を掛けてきていた。そして時々何かを思案する様に暗い表情を浮かべることも多々あった。
そんなフレッドと友人として、そして今は恋人として、こうして時々揶揄いながらも笑って過ごせているのは心を許して貰っている何よりの証拠だろう。
だが、そう分かっていても、やられてばかりで悔しさは拭えない。
アンリが一人の世界に入っていると、冷たくなっていた手が途端に温かい温もりに包まれる。
「アンリの手、冷たくなってる。僕の手は温かいから、こうして体温分けてあげる」
「私はこんなに動揺しちゃうのにフレッドばかり余裕そうでズルい…」
「僕が余裕そうに見えるの?そんなわけ無いよ。いつだって不安はあるし、照れるし、アンリの一言で動揺する事もあるんだよ」
「本当に?」
「僕はアンリに比べたら思ってる事が顔に出るタイプじゃ無いから、アンリが気づいていないだけで僕も内心では色々な事を思ってるんだよ。なにより告白はアンリからさせちゃったから。これからは思ってる事をちゃんと伝えて、アンリを不安にさせないくらい愛情表現もちゃんとしていこうって決めたの」
そんな気遣いが温かく嬉しい反面、やはり直接お礼を言うのは気恥ずかしい。何を言うわけでも無くこの気持ちが伝われと願いながらアンリの手を優しく包み込む手を強く握り返せば、気持ちに応えるかのように同じだけ強く優しく握り返してくれる。
一度好きだと自覚してしまえば言葉を交わすだけで、顔を見るだけで、手が触れ合うだけで狂おしいほど愛おしく好きだという気持ちが溢れてくるのだ。
「ついお話に夢中になってしまいましたね。フレッドさん、是非またお話しましょう」
「はい、もちろんです」
「ではお二人とも、お気をつけてお帰り下さい」
馬車が出発しても隣に座るフレッドは口角を上げ、どこか嬉しそうな表情だ。余程、カリマーとの会話に花が咲いた事が嬉しく、楽しい時間だったのだろう。
「よかったね、気の合うお友達が出来て」
「先輩のことを友達って言っても良いのかな」
「友達になるのに年齢なんて関係ないよ。私だってフルール先輩はもちろん、カリマー先輩の事もお友達だと思ってるし、フレッドだって年齢が違っても私とお友達でしょう?」
「アンリ…、それ本気で言ってる?」
それまで頬を緩めていたフレッドは途端に拗ねた表情を見せると、アンリの瞳をまっすぐに見つめる。
まさか気づかない間に何か変な事を言ってしまったのだろうか…。
「え?私、何か変な事言っちゃった?」
「僕達、お互いに気持ちが通じ合ったのに”友達”なの?」
「え?あ…」
揶揄うように珍しく意地悪な少年のような笑みを向けるフレッドを前にアンリの頬は真っ赤に染まる。
「アンリ、顔真っ赤。可愛いね」
耳まで赤くして真っ直ぐにフレッドの顔を見られないアンリと対照的に、フレッドは涼しい表情で微笑む。
これじゃあ私ばかりが動揺しているようで、悔しい。
話を変えるために思考を巡らせ、気になってはいたものの、なんとなく聞けずにいた事を思い出す。
「…そう言えば、この間の女の子ってフレッドとどういう関係だったの?」
フレッドは空気を変えるために話題を強引に変えたことに気づいているようだが、これ以上はアンリを揶揄おうとはせず質問に答えてくれる。
「図書館に行った時に僕がお話してたご令嬢のこと?」
「すごく楽しそうに話してたから気になって…」
アンリが自分の気持ちに気がつけたのは、図書館でフレッドがご令嬢と楽しそうに話している場面を目撃し、嫉妬したのがきっかけだ。あの時はフレッドが他の女の子の元に行ってしまったらという事ばかりを考えて詳しく知ろうとしなかったが、今思えばあの女の子は誰で、何をあんなにも楽しそうに話していたのだろうと気になってしまう。
「あぁ、あの時はアンリのことを話していたんだよ」
「え?私?どうして?」
「あの子、僕と同じ一年生らしいんだけど、学祭の舞台を見てアンリのファンになったんだって。だけどアンリに直接声を掛ける勇気は無かったから、普段アンリと一緒に居る僕に声を掛けて、オーリン様に素敵な舞台でしたって伝えて下さいって頼まれてたの。僕も色々あって、今の今まで伝言を頼まれてたことすら忘れちゃってたんだけど…」
「そうだったの?」
「そうだよ、だからあのご令嬢と話したのは僕もあの日が初めてだし、楽しそうに話しているように見えたのはアンリのことを話していたから。まぁそんな事実を知らなかったおかげで、アンリは嫉妬した勢いで気持ちを伝えてくれたんだよね」
「揶揄ってる…?」
「勘違いでも嫉妬してくれたおかげで両思いだって分かったんだし、僕は感謝してるんだよ」
両思いだと分かってからフレッドは肩の力が抜けたのか、時々こうしてアンリを揶揄ったりアンリが照れるような事をわざと言って、アンリが顔を赤くする姿を見ては楽しんでいる。
アンリがこの世界にやって来た頃、フレッドはアンリの執事だった事もありアンリの事を”アンリ様”と呼び、常に敬語で声を掛けてきていた。そして時々何かを思案する様に暗い表情を浮かべることも多々あった。
そんなフレッドと友人として、そして今は恋人として、こうして時々揶揄いながらも笑って過ごせているのは心を許して貰っている何よりの証拠だろう。
だが、そう分かっていても、やられてばかりで悔しさは拭えない。
アンリが一人の世界に入っていると、冷たくなっていた手が途端に温かい温もりに包まれる。
「アンリの手、冷たくなってる。僕の手は温かいから、こうして体温分けてあげる」
「私はこんなに動揺しちゃうのにフレッドばかり余裕そうでズルい…」
「僕が余裕そうに見えるの?そんなわけ無いよ。いつだって不安はあるし、照れるし、アンリの一言で動揺する事もあるんだよ」
「本当に?」
「僕はアンリに比べたら思ってる事が顔に出るタイプじゃ無いから、アンリが気づいていないだけで僕も内心では色々な事を思ってるんだよ。なにより告白はアンリからさせちゃったから。これからは思ってる事をちゃんと伝えて、アンリを不安にさせないくらい愛情表現もちゃんとしていこうって決めたの」
そんな気遣いが温かく嬉しい反面、やはり直接お礼を言うのは気恥ずかしい。何を言うわけでも無くこの気持ちが伝われと願いながらアンリの手を優しく包み込む手を強く握り返せば、気持ちに応えるかのように同じだけ強く優しく握り返してくれる。
一度好きだと自覚してしまえば言葉を交わすだけで、顔を見るだけで、手が触れ合うだけで狂おしいほど愛おしく好きだという気持ちが溢れてくるのだ。

