伯爵令嬢になった世界では大切な人に囲まれ毎日が輝く2

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「フルール先輩、今日は一日ありがとうございました。とても楽しかったです」

 空がオレンジ色に変わりだした頃、フルールと共にお屋敷を出るとルイが馬車で迎えに来てくれていた。
 そして驚く事に、今日は朝から買い物に行くと民用馬車に乗って出掛けて行ったフレッドもルイと一緒に迎えに来てくれていた。

「こちらこそ、私もアンリちゃんと二人でゆっくりお喋り出来て楽しかったです。ぜひまた今度、遊びましょう」
「じゃあ今度はぜひ、私のお屋敷に遊びに来てください」
「それなら第二回の女子会はアンリちゃんのお屋敷で決定ですね。ではアンリちゃん、気をつけてお帰りくださいね」

 馬車に乗り込みフレッドと向き合う様に座ると馬車はゆったりとしたペースで走りだす。姿が見えなくなるまでフルールはお屋敷の前で手を振り続けてくれる。そんなフルールにアンリも手を振り返すが、あっという間にお互いに姿が見えなくなってしまった。

「アンリ、その表情を見れば聞かなくても分かるけど、今日は楽しかった?」
「うん!とっても楽しかった!」

 そう笑顔で返すとフレッドはまるで自分の事のように喜び笑ってくれる。

「やっぱり同性の友達相手の方が喋りやすい事もあるだろうし、アンリに副会長さんみたいな優しい友達が出来て良かったよ」
「えへへ、ありがとう。そういえばフレッドはお買い物に行ってたんだよね。何か良いものは買えた?」
「実は今日の買い物はアンリへのプレゼントを買いに行ってたんだ」
「私の?」
「いつも僕とアンリは一緒にいるでしょう?だからなかなかサプライズするのも難しくて。でも今日は副会長さんと遊ぶって言うから、ちょうど良いタイミングだなって思って買い物に行ってきたんだ。これ、受け取ってくれる?」

 フレッドはピンク色のリボンに巻かれた小さな包みを差し出す。

 今朝、朝食を食べていると突然、一緒に食事を取っていたフレッドが「今日、僕は買い物に行ってこようかな」と言いだした。フレッドが自らの用事で出掛けてくると言うのは珍しい事だったし、せっかくなら有意義な時間を過ごして欲しいと思って「今日は一日楽しんで来てね」と送り出したのに、まさかアンリへのプレゼントを買うために外出していたなんて。

「開けても良い?」
「うん、もちろん。開けてみて」

 ゆっくりリボンを解き、箱の蓋を開けると白いお花のモチーフのブローチが顔を出す。お花はスズランに似ているが少し違うようにも見える。

「スノーフレークってお花がイメージなんだって」
「スノーフレーク?」
「春に咲くお花で花言葉は純粋、汚れなき心、みんなを惹きつける魅力。アンリのイメージにピッタリでしょう?」
「ありがとう!すっごい嬉しい」
「アンリが喜んでくれて良かった」

 こうしてサプライズで贈り物を貰ったのは初めてだ。贈り物をもらえただけで十分すぎるほど嬉しいが、それ以上にアンリの事を考えて選んでくれたというのがなによりも嬉しい。

「でもどうして急に贈り物をくれたの?何か特別な日って訳でもないよね」
「前にアンリが僕に懐中時計をくれたでしょう?そのお返しの意味もあるけど、それ以上に僕から贈り物をしたいと思ったんだ。だから気軽に受け取ってくれると僕も嬉しいな」

 フレッドがアンリの執事をしてくれていた頃、日頃支えてくれている感謝も込めて懐中時計をプレゼントした。そんな時計をフレッドは今でも大切そうに、毎日使ってくれている。

「ありがとう!私もこれ、毎日身に付けるよ!」

 女子会で色々なお話が出来たこと、そしてフルールとより一層仲良くなれただけで今日はとても良いい一日になったと嬉しくなっていたというのに、こんなにも素敵なブローチをプレゼントして貰えて、今日は幸せな気持ちで溢れて溺れてしまいそうだ。

 フワフワとした幸せな気持ちに包まれたまま、アンリはフレッドと共にお屋敷への道を馬車に揺られて帰っていくのだった。