伯爵令嬢になった世界では大切な人に囲まれ毎日が輝く2

      ***

 警備員にキューバ・オーガスを引き渡し、急ぎ足で別館の三階へ戻る。

「アンリ、大丈夫かな…」

 ソアラやレジスから昼休憩の時間にフレッド達を呼び出したのが長身で長髪、アンリと同じく舞台に立ち王子役を演じていた男だと聞いた途端、ミンスは顔色を変え、何も言わずに走り出した。そんなミンスの纏う空気がただ事では無いと察したフレッドは念の為、警備員を連れてミンスが向かったであろう、アンリの元へ走った。

 三階に上がり、部屋に入ると寝室ではミンスとキューバ・オーガスが睨み合うように対峙し、制服が乱れたアンリはミンスの隣で体を縮こませていた。嫌でも状況を理解してしまったフレッドはアンリの名を叫んだ。
 そして警備員へキューバ・オーガスを捕えさせると、彼はずっとアンリへ狂ったような想いを叫び続けていたが、廊下へと連れ出され、フレッドも共に同行を頼まれ、ミンスにアンリを任せると警備事務所へと向かった。

「僕ね、今までは大切なお友達としてアンリちゃんを好いていると思ってたの。でもね、アンリちゃんの事を一人の女の子として好いているみたいなんだ。だからいつだってアンリちゃんには誰よりも笑っていて欲しいし、僕が守りたいの」

 部屋へ入ろうとすると、空いていた扉の向こうからそんな声が聞こえ、自然と足が止まってしまう。

 分かっていた。ソアラだけで無く、ミンスやレジスがアンリに特別な好意を寄せているということ。
 アンリ本人はそういう事に関しては鈍感なようで特に気がついていない様だったが、フレッドからしてみれば三人の気持ちは見え見えだった。

 ソアラ伯爵主催の舞踏会でソアラから告白されたアンリは同時に「忘れてくれ」と言われたようで、今も特に進展も無いまま変わらずに過ごしている。

 だが、これからはどうだろうか。ソアラに告白され、ミンスにも告白された。
 アンリはこれからどうするのだろう。そもそもアンリは誰かに恋心という名の行為を抱いているのだろうか…。