客席からはしばらくの間、拍手が聞こえていた。
やり終えたという達成感もありつつ、終わってしまったのだという脱力感に包まれたアンリは楽屋へ向かう道中、隣には共に舞台を終えたカリマーがいるにも関わらず、大きく息を吐いていた。
「アンリさんでも、さすがに疲れてしまいましたか?」
「いえ、疲れてしまったと言うより気が抜けてしまって」
「主役という大役に、無意識のうちに肩の力が入っていたのかもしれませんね」
楽屋に入ると、そこに集まっているのはアンリ達よりも先に舞台を降りた役者達だ。裏方の学生は舞台上を他の芸術科目の学生達がこの後使う予定があるため、軽く片付けをしたり、持ち場での作業を終えて徐々に戻ってくるはずだが、全員が揃うには時間が掛かるだろう。
アンリとカリマーが楽屋へ入ると、先に舞台を降りていたキューバが声を掛けてくる。
「アンリちゃん、お疲れ様!あ、カリマー先輩もお疲れ様です」
「キューバ先輩、お疲れ様です」
「アンリちゃん、今日の演技とっても良かったよ。今までももちろん良かったけど、今日が一番だったんじゃないかな」
「本当ですか!ありがとうございます」
「でも今日でアンリちゃんの姫役が見られなくなるのは少し寂しいなぁ」
「そんな事言わなくても、次の舞台でもアンリさんが配役に選ばれれば、今度は違う役を演じるアンリさんを見られるでしょう?」
「確かにそうですけどぉ」
舞台が終わってもカリマーとキューバの調子は普段と変わらない。にも関わらず、そんないつもの光景が今ではアンリを不思議な気持ちにさせる。
ボーッと静観しているアンリを不思議に思ったキューバはアンリの顔を覗き込む。
「アンリちゃん?どうしたの?疲れちゃった?」
「いえ、先輩達は舞台に立っている時は敵対関係だったじゃないですか?それが嘘みたいに仲良いので、なんだか不思議な感じがして」
「別に僕と彼は仲が良くは無いと思いますけど…」
「先輩、何を恥ずかしがってるんですか。私達、仲良しじゃ無いですか」
肩を組もうと手を伸ばすキューバを軽くあしらったカリマーは舞台上で浮かべていた笑みを消し、溜息を落とす。
「はぁ、君という人は…。僕を揶揄う暇があれば、君なら他の人といくらでも仲良くなれるだろうに…」
「私は先輩だから揶揄いたいと思うんですよ」
「もういい。僕は一度席を外しますが、しばらくすれば他の方々も戻ってきてミーティングになりますよ」
カリマーは足早に楽屋を出ていく。
口には出さないがキューバから逃げたな、と思いつつ残されたアンリとキューバは舞台の感想なんかを言い合い、片付けを終え楽屋に戻ってきた学生を迎え入れた。
やり終えたという達成感もありつつ、終わってしまったのだという脱力感に包まれたアンリは楽屋へ向かう道中、隣には共に舞台を終えたカリマーがいるにも関わらず、大きく息を吐いていた。
「アンリさんでも、さすがに疲れてしまいましたか?」
「いえ、疲れてしまったと言うより気が抜けてしまって」
「主役という大役に、無意識のうちに肩の力が入っていたのかもしれませんね」
楽屋に入ると、そこに集まっているのはアンリ達よりも先に舞台を降りた役者達だ。裏方の学生は舞台上を他の芸術科目の学生達がこの後使う予定があるため、軽く片付けをしたり、持ち場での作業を終えて徐々に戻ってくるはずだが、全員が揃うには時間が掛かるだろう。
アンリとカリマーが楽屋へ入ると、先に舞台を降りていたキューバが声を掛けてくる。
「アンリちゃん、お疲れ様!あ、カリマー先輩もお疲れ様です」
「キューバ先輩、お疲れ様です」
「アンリちゃん、今日の演技とっても良かったよ。今までももちろん良かったけど、今日が一番だったんじゃないかな」
「本当ですか!ありがとうございます」
「でも今日でアンリちゃんの姫役が見られなくなるのは少し寂しいなぁ」
「そんな事言わなくても、次の舞台でもアンリさんが配役に選ばれれば、今度は違う役を演じるアンリさんを見られるでしょう?」
「確かにそうですけどぉ」
舞台が終わってもカリマーとキューバの調子は普段と変わらない。にも関わらず、そんないつもの光景が今ではアンリを不思議な気持ちにさせる。
ボーッと静観しているアンリを不思議に思ったキューバはアンリの顔を覗き込む。
「アンリちゃん?どうしたの?疲れちゃった?」
「いえ、先輩達は舞台に立っている時は敵対関係だったじゃないですか?それが嘘みたいに仲良いので、なんだか不思議な感じがして」
「別に僕と彼は仲が良くは無いと思いますけど…」
「先輩、何を恥ずかしがってるんですか。私達、仲良しじゃ無いですか」
肩を組もうと手を伸ばすキューバを軽くあしらったカリマーは舞台上で浮かべていた笑みを消し、溜息を落とす。
「はぁ、君という人は…。僕を揶揄う暇があれば、君なら他の人といくらでも仲良くなれるだろうに…」
「私は先輩だから揶揄いたいと思うんですよ」
「もういい。僕は一度席を外しますが、しばらくすれば他の方々も戻ってきてミーティングになりますよ」
カリマーは足早に楽屋を出ていく。
口には出さないがキューバから逃げたな、と思いつつ残されたアンリとキューバは舞台の感想なんかを言い合い、片付けを終え楽屋に戻ってきた学生を迎え入れた。

