伯爵令嬢になった世界では大切な人に囲まれ毎日が輝く2

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 オーリン家の屋敷で生活させて貰っている事もあり、日々誰よりもアンリの近くに居るとフレッドは自負している。それでも舞台に立ち、表情を変えるアンリはまだ見ぬ新しい姿だった。
 そしてアンリを初めとして、自然な表情で舞台に立つ彼らに、舞台を見ていると忘れらせられるほど、フレッドやミンス、ソアラやレジスは熱中させられていた。

 出来る事なら今すぐにでもアンリの元へ駆けつけたい。そして声を掛けたい。おそらくこの大講堂のどこかで舞台を観劇していた旦那様や奥様も同じ気持ちで居る事だろう。
 だが今は我慢だ。アンリがやる事を終え、戻ってきた時にゆっくり今日の感想を伝えてあげよう。

 元々アンリは陰で努力するタイプで、去年のダンスの練習の時もそうだったが、必死に練習し、本番には誰もが想像していた以上の結果を残す。今回も主役に選ばれてから、暇さえあれば台本を読み込んでいた。そしてアンリに当日のお楽しみだと言われていたため、横目で見たくらいだが、台本には空白の部分が無いほど、びっしりとメモ書きがされていた。

 それだけでは無い。去年の今頃、アンリは過去のトラウマや嫌な記憶が原因で必要以上に新たな友人関係、人間関係を広げる事を拒み、内々での関係構築を望んでいた。
 そんなアンリが今では上級生との関わりを持ち、作りモノではない正真正銘の笑みを浮かべる。

 アンリは気がつくと、いつの間にか成長している。時々それを不思議と寂しくも思う事もあるが、それ以上に嬉しく、これからどんな風にアンリが成長していくのかと思うと楽しみで仕方がない。