***
通し稽古を終え、着替えを済ませるとアンリはいつものように別館へ向かう。
クラブには既に全員が揃っていた。フレッドがアンリよりも先にクラブに顔を出すことは珍しいが、クイニー達が芸術科目として選択した絵画は緩いようで、いつもかなり早い時間に終わってクラブに顔を出している。そしてアンリが学祭で舞台を上演するように、クイニー達も一応学祭で作品の展示をするらしい。
「アンリちゃん、お疲れ様」
「みんなもお疲れ様。相変わらず早く終わったの?」
「まぁな。んでアンリの方は順調なのか?」
「今日の通し稽古も問題なく済んだし、バッチリ」
「そうか」
「ついに明日だなんて、時間の進みは早いな」
「みんなも見に来てくれる?」
「…見に行かないといけないのか?」
アンリが首を傾げると、クイニーは躊躇うように答える。予想外の返答に、アンリは視線を落とす。みんなから見られるのは恥ずかしいが、せっかくの初めての舞台だ。フレッドやお母様、お父様は見に来てくれると約束してくれているが、せっかくなら友人達にも見て貰いたかった。
肩を落とし、見るからに元気を無くしたアンリにクイニーは口の端を持ち上げる。
「あぁもう、クイニーはすぐに意地悪言わないの。アンリちゃん、クイニーはただアンリちゃんに意地悪言っただけだよ」
「え?」
「だってアンリちゃんが主役に決まったって教えてくれてた時から楽しみにしてたんだもん。みんなで揃って見に行くよ」
「本当?本当に来てくれるの?」
アンリが確認するようにザックに視線を送る。
「あぁ、私達もアンリ様が明日に向けて頑張っていたのは知っているし、なにより友人の晴れ舞台だ。見に行くに決まってる。だろ、クイニー?」
「まぁアンリがどうしてもって言うなら仕方ないな」
「クイニーは本当に素直じゃないな」
「そうだよ、初めから楽しみにしてるよって言ってあげれば良いのに」
「俺は頑固じゃねぇ」
「いや、誰が見ても頑固だと思うよ?ねっ、フレッドくん」
ミンスに話を振られたフレッドは口の端をあげ、悪戯っ子の様な笑みを浮かべる。
「はい。それに先日、学祭のパンフレットを見ながらアンリの舞台の始まる時間、調べてましたよね」
「お前…、見てたのか」
「バレないように扉の隙間から見ていました」
「バノフィー、お前やるようになったな」
「やっぱりクイニーもアンリちゃんの舞台を楽しみにしてたんじゃん」
「クイニーはツンデレだな」
「誰がツンデレだ」
「違うよ。クイニーはツンデレじゃなくて、ツンツンだよ」
「なんだそれ」
アンリ達の間には自然と笑い声が広がる。ツンツンって、ツンデレと違って可愛げも何も無いじゃないか。猫ですら、普段は素っ気ない態度を取っていても時々デレるから愛らしいというのに。
ミンスは自分で言ったことにツボったのか、誰よりも笑う。クイニーでさえ、初めはムスッとした顔をしていたくせに、今では笑っている。
やっぱり彼らと過ごす時間は飽きない。そして出来る事ならば、こんな時間が永遠に続いて欲しい。
通し稽古を終え、着替えを済ませるとアンリはいつものように別館へ向かう。
クラブには既に全員が揃っていた。フレッドがアンリよりも先にクラブに顔を出すことは珍しいが、クイニー達が芸術科目として選択した絵画は緩いようで、いつもかなり早い時間に終わってクラブに顔を出している。そしてアンリが学祭で舞台を上演するように、クイニー達も一応学祭で作品の展示をするらしい。
「アンリちゃん、お疲れ様」
「みんなもお疲れ様。相変わらず早く終わったの?」
「まぁな。んでアンリの方は順調なのか?」
「今日の通し稽古も問題なく済んだし、バッチリ」
「そうか」
「ついに明日だなんて、時間の進みは早いな」
「みんなも見に来てくれる?」
「…見に行かないといけないのか?」
アンリが首を傾げると、クイニーは躊躇うように答える。予想外の返答に、アンリは視線を落とす。みんなから見られるのは恥ずかしいが、せっかくの初めての舞台だ。フレッドやお母様、お父様は見に来てくれると約束してくれているが、せっかくなら友人達にも見て貰いたかった。
肩を落とし、見るからに元気を無くしたアンリにクイニーは口の端を持ち上げる。
「あぁもう、クイニーはすぐに意地悪言わないの。アンリちゃん、クイニーはただアンリちゃんに意地悪言っただけだよ」
「え?」
「だってアンリちゃんが主役に決まったって教えてくれてた時から楽しみにしてたんだもん。みんなで揃って見に行くよ」
「本当?本当に来てくれるの?」
アンリが確認するようにザックに視線を送る。
「あぁ、私達もアンリ様が明日に向けて頑張っていたのは知っているし、なにより友人の晴れ舞台だ。見に行くに決まってる。だろ、クイニー?」
「まぁアンリがどうしてもって言うなら仕方ないな」
「クイニーは本当に素直じゃないな」
「そうだよ、初めから楽しみにしてるよって言ってあげれば良いのに」
「俺は頑固じゃねぇ」
「いや、誰が見ても頑固だと思うよ?ねっ、フレッドくん」
ミンスに話を振られたフレッドは口の端をあげ、悪戯っ子の様な笑みを浮かべる。
「はい。それに先日、学祭のパンフレットを見ながらアンリの舞台の始まる時間、調べてましたよね」
「お前…、見てたのか」
「バレないように扉の隙間から見ていました」
「バノフィー、お前やるようになったな」
「やっぱりクイニーもアンリちゃんの舞台を楽しみにしてたんじゃん」
「クイニーはツンデレだな」
「誰がツンデレだ」
「違うよ。クイニーはツンデレじゃなくて、ツンツンだよ」
「なんだそれ」
アンリ達の間には自然と笑い声が広がる。ツンツンって、ツンデレと違って可愛げも何も無いじゃないか。猫ですら、普段は素っ気ない態度を取っていても時々デレるから愛らしいというのに。
ミンスは自分で言ったことにツボったのか、誰よりも笑う。クイニーでさえ、初めはムスッとした顔をしていたくせに、今では笑っている。
やっぱり彼らと過ごす時間は飽きない。そして出来る事ならば、こんな時間が永遠に続いて欲しい。

