町のはずれにある丘で、リゼットは
「早く早く!」
と、はしゃぎながら、そこに佇む煉瓦色の時計台を指差した。
登り坂をゆっくりと登っていく。
時計台の麓へ着くと、遠くで見るよりも高く感じた。
螺旋状の階段を登る途中、ミナは
「ちょっと……待ってよ……あんたたち、どこにそんな体力があるのよ……」
とぶつぶつ言っていた。
リゼットがふと立ち止まり、
「さぁ! お待たせしました! ここが、私のお気に入りの場所だよ〜!」
と言って、じゃじゃーんっと両手を扉の向こうへ伸ばした。
その先に、リアは一歩足を踏み入れる。
目が眩むほどの眩しさの先に、ノースフィアの町が見えた。
夕暮れが雲の切れ間から差し込み、世界が金色に染まる。
町は淡く光を反射していた。
その周りには、森が広がり、湖が静かに佇む。
小さくて、大きな世界。
「きれい……」
リアがつぶやくと、リゼットは柔く微笑んだ。
まもなくして、息を切らしたミナが隣に並ぶ。
リアは、黙って金色の世界を眺めていた。
世界はただ、そこにある。
目に見えていたものは、とても小さなものだった。
この世界は紛れもなく、美しかった。
しばらくの沈黙が続いたあと、ミナがゆっくりと口をひらく。
「この町はね、世界に比べたら、とても小さいわ。そして、みんながみんな自分に優しいわけじゃない。でも、それでいいと思うの」
リゼットも笑いながら続けた。
「私だって、好きな人と嫌いな人がいるし! 全員に好かれるなんて無理だよ」
リアは、その言葉をゆっくりと反芻する。
「……そっか。リゼットでも無理、なんだね」
「そりゃあねぇ! 人間だもん、仕方ないよね!」
「いろんな人がいるわ。だから、リアもリアでいることをやめる必要はない」
ミナがリアの瞳を捉えて、まっすぐに言う。
その強さに引っ張られるように、ぽつりとリアが言葉をこぼした。
「わたし……自分のこと、何もわからないの。記憶がなくて……。どう生まれて、どう育ってきたか。何を見て、何を大切にしていて、どんなことを感じてきたのか」
ミナは、大きく息を吐くと、ゆっくりと言った。
「人って、自分のことでも全部わかるわけじゃないわ。私だってわからないことだらけよ。それでも……向き合うことはできる」
リゼットも小さく頷く。
「昔がどうとか……私、よくわからないけど、リアは今ここにいるんだから、それでいいんじゃないかな?」
「あら、たまにはいいこと言うじゃない」
リゼットを見てミナはふふっと笑った。
「へへーん!」とリゼットは自慢げに腰に手を添える。
「たまーにね! リゼットはすぐ調子に乗るんだから」
「厳しい〜! 私褒めて伸びるタイプなの! リア、助けてぇ」
リゼットが抱きつくと、リアはようやく、ほんの少しだけ、唇の端を上げた。
「……ミナ、リゼット。ありがとう」
リゾットはにっこりと笑い、ミナも静かに微笑んだ。
「リアは、ちゃんと向き合ってきたよ。自分自身とも、この町とも。ずっと。だから、大丈夫」
ミナの言葉に、リアは小さく目を閉じ、深呼吸した。
胸の中でずっしりと重さを湛えていた何かが、金色の世界に溶けていく気がした。
風が、夕陽に照らされた銀色の髪が揺らす。
刻一刻と変わりゆく景色は、まばゆいほどに美しく輝く世界だった。
「早く早く!」
と、はしゃぎながら、そこに佇む煉瓦色の時計台を指差した。
登り坂をゆっくりと登っていく。
時計台の麓へ着くと、遠くで見るよりも高く感じた。
螺旋状の階段を登る途中、ミナは
「ちょっと……待ってよ……あんたたち、どこにそんな体力があるのよ……」
とぶつぶつ言っていた。
リゼットがふと立ち止まり、
「さぁ! お待たせしました! ここが、私のお気に入りの場所だよ〜!」
と言って、じゃじゃーんっと両手を扉の向こうへ伸ばした。
その先に、リアは一歩足を踏み入れる。
目が眩むほどの眩しさの先に、ノースフィアの町が見えた。
夕暮れが雲の切れ間から差し込み、世界が金色に染まる。
町は淡く光を反射していた。
その周りには、森が広がり、湖が静かに佇む。
小さくて、大きな世界。
「きれい……」
リアがつぶやくと、リゼットは柔く微笑んだ。
まもなくして、息を切らしたミナが隣に並ぶ。
リアは、黙って金色の世界を眺めていた。
世界はただ、そこにある。
目に見えていたものは、とても小さなものだった。
この世界は紛れもなく、美しかった。
しばらくの沈黙が続いたあと、ミナがゆっくりと口をひらく。
「この町はね、世界に比べたら、とても小さいわ。そして、みんながみんな自分に優しいわけじゃない。でも、それでいいと思うの」
リゼットも笑いながら続けた。
「私だって、好きな人と嫌いな人がいるし! 全員に好かれるなんて無理だよ」
リアは、その言葉をゆっくりと反芻する。
「……そっか。リゼットでも無理、なんだね」
「そりゃあねぇ! 人間だもん、仕方ないよね!」
「いろんな人がいるわ。だから、リアもリアでいることをやめる必要はない」
ミナがリアの瞳を捉えて、まっすぐに言う。
その強さに引っ張られるように、ぽつりとリアが言葉をこぼした。
「わたし……自分のこと、何もわからないの。記憶がなくて……。どう生まれて、どう育ってきたか。何を見て、何を大切にしていて、どんなことを感じてきたのか」
ミナは、大きく息を吐くと、ゆっくりと言った。
「人って、自分のことでも全部わかるわけじゃないわ。私だってわからないことだらけよ。それでも……向き合うことはできる」
リゼットも小さく頷く。
「昔がどうとか……私、よくわからないけど、リアは今ここにいるんだから、それでいいんじゃないかな?」
「あら、たまにはいいこと言うじゃない」
リゼットを見てミナはふふっと笑った。
「へへーん!」とリゼットは自慢げに腰に手を添える。
「たまーにね! リゼットはすぐ調子に乗るんだから」
「厳しい〜! 私褒めて伸びるタイプなの! リア、助けてぇ」
リゼットが抱きつくと、リアはようやく、ほんの少しだけ、唇の端を上げた。
「……ミナ、リゼット。ありがとう」
リゾットはにっこりと笑い、ミナも静かに微笑んだ。
「リアは、ちゃんと向き合ってきたよ。自分自身とも、この町とも。ずっと。だから、大丈夫」
ミナの言葉に、リアは小さく目を閉じ、深呼吸した。
胸の中でずっしりと重さを湛えていた何かが、金色の世界に溶けていく気がした。
風が、夕陽に照らされた銀色の髪が揺らす。
刻一刻と変わりゆく景色は、まばゆいほどに美しく輝く世界だった。
