午後の陽が傾きはじめる頃、カイは診療所の前に立っていた。
リアを家まで送り届けたイファと待ち合わせをしていたからだ。
ほどなく、イファが軽く走って戻ってきた。
「無事に送り届けたか? リアちゃんの様子はどうだ?」
カイが確認するように声をかける。
「はい。今は落ち着いてます。今日は、僕らだけで話をして、ある程度情報が集まったら、リアにもゆっくり、伝えていきましょう」
イファの声は静かだが、決意を帯びていた。
カイは頷き、イファの肩を軽く叩いた。
「賢明だな。よし、じゃあ、行くか」
扉を開けると、薬草と消毒液が混じった独特の香りが鼻をかすめた。
カイは、受付に座る年配の女性に声をかける。
「すみません、警備隊隊長のカイ・ロウェルです」
「あら、ロウェルさん。イファくんも一緒なのね」
イファが軽く会釈をすると、その女性はニコリと微笑み、「どうしたの?」と聞く。
カイはいつもの笑顔で言った。
「お昼休憩の時間ですよね。突然すみません。実は、ジュード先生にお聞きしたいことがあって伺いました」
「先生ね。ちょうどさっき、午前中の診療が終わったところだから、まだ診療室にいると思うわ。声をかけてみるから、ちょっと待っていてくださいね」
「助かります」
カイが礼を言い終えると、女性は診察室へ向かった。
二人は待合室の椅子で座って待つ。
すると、数分も立たないうちに、女性が戻ってきた。
「お待たせしてすみませんね。その扉から、どうぞ入って。」
カイは女性に会釈すると、白い扉を控えめにノックした。
扉の中から落ち着いた声が返ってくる。
「──どうぞ」
診察室へ入ると、奥の机でジュード・セイランは何かをカルテに記入していた。
だが彼は、すぐに手を止め、穏やかな微笑みをこちらへ向ける。
「どうも。カイ隊長にイファ君」
「こんにちは」
イファとカイは丁寧に頭を下げる。
ジュードが笑顔で促した椅子に二人は腰を下ろした。
そして腰掛けた二人の真剣な表情を見て、ジュードはひとつ呼吸を置いた。
「……さて、診察、ではなさそうだね」
ははっと軽く笑うジュードの柔らかな雰囲気に、イファは安堵して
「少し、相談があって来ました」と言った。
ジュードはゆっくりと、落ち着いた口調で言う。
「……リアさんの件、だね?」
イファは、小さく頷いた。
「はい。先生……今現状でわかっていることをお話します」
カイとイファはここ数日の出来事を順に説明した。
探査機の発見、火事でリアが光ったこと、それが記録されていたこと
──そして、思い当たる、
その光の名。
ルクシミウム。
ジュードは、最後まで黙って耳を傾けていた。
