今朝の胸のざわめきを静かに溶かすように、ノースフィアの夜は穏やかだった。
月の光が雲間からこぼれ、石畳を淡く照らしている。
リアの部屋の前で、イファは一度深く息を吸い込んだ。
コン、コン、コン。
ドアを軽くノックすると、すぐに内側から声が返ってきた。
「……イファ?」
「うん。ごめん、もう寝てた?」
扉が静かに開き、白い寝間着姿のリアが顔を覗かせた。
淡い月明かりが、彼女の髪を柔らかく彩る。
「いえ、まだ起きてました……どうしたの?」
「ちょっと、話があって……」
イファは少し躊躇ったが、微笑みながら続けた。
「明日、警備隊の詰所に一緒に来てくれないかな」
「……私が?」
「うん。リアに見て欲しいものがあるんだ。もちろん、無理にとは言わないけど……少し話を聞いてほしくて」
リアは少し考えたように視線を落とし、静かに頷いた。
「……わかりました」
不安を含みながらも、リアのその声はまっすぐだった。
「よかった」
イファはほっと息をつく。
「じゃあ、明日、朝一緒に行こう。今日は、もう休んで」
「うん。おやすみなさい、イファ」
「おやすみ、リア」
静かな扉の音が、優しく夜に吸い込まれていった。
