それでも、この世界で、光を


──町で火事が起こっていたそのとき。

カイ・ロウェルは、ひとり森の奥へと足を踏み入れていた。
地面はぬかるみ、獣の足跡が複数残っている。


「……やっぱり、何かがおかしい」

妙に動物の姿が見えない。
森の鳥も、虫も静まり返っていた。

森の奥で何かが起きている──そう確信して、カイは調査を進めていた。



やがて視界が開け、古くて崩れそうな小屋の跡地に出る。
その中央、草に覆われた地面に何かがあった。


「……なんだ、これ」


地面に埋もれるようにして転がっていたのは、金属の残骸。
外装は焦げつき、部分的に破損している。

それでもかすかに、センサーと思しき部分が淡く点滅していた。


カイは慎重に近づき、手袋越しにパネルをなぞる。



《観測機体 K-07》
《任務:対象監視》
《観測対象:Code-Lux 01》
《備考:機密レベルS / 非戦闘型自律観測機》



「……観測対象……コード・ルクス……?」



読み取った瞬間、破損しかけた本体から、突如としてホログラムのような映像が浮かび上がる。
白く煙る火災現場、炎のなかから現れる銀色の髪の少女。



──リアだった。


音声はなく、断片的な記録。
だが、鮮明だった。


「……誰が、こんなものを……」



風が木々を揺らし、光がちらちらと木漏れ日を落とす。
カイは、静かに立ち上がると、機体をリュックに収めた。


──対象監視。
──機密レベルS。


この森で起きていることは、戦争のきな臭さと深く結びついている。
そしてリアが、その何かに関わっている……。


「……あの子は、ただの“希望”で済む存在じゃない……のかもしれねぇな」


カイは誰にともなくつぶやいた。
風が枝を揺らし、葉がざわめく。

その眼差しには、警備隊長としてではなく、リアを知る一人の人間としての複雑な感情が宿っていた。