それでも、この世界で、光を




鎮火するとすぐにイファはホースを置き、リアのもとへと駆け寄った。

「リア! 大丈夫か!? 怪我とかしてない?」

リアはゆっくりとイファの方を向いた。
その瞳は力なく揺れている。


「……はい。」

「よかった……なんで、火の中になんか……」

「あの子の声が、聞こえたから。」

リアは、目の奥がチカチカと痛むのを感じた。

「わたしも、みんなを笑顔にしたい。誰かの、光になりたいと思いました」

リアの言葉を聞いて、イファは大きな、大きなため息を吐く。
そして、リアの手を取り、目の前でその場に崩れ落ちた。

「リア、すごいな……」

目を閉じて、ぽろりと言葉をこぼした。

「本当に、無事で、よかった……」

握られた手はあたたかかった。

「リアは、たしかに誰かの光だ。まだ、たくさんのことが思い出せなくても、俺は、信じてる。リアは、リアだ」

リアは胸元をそっと押さえる。そこに宿った光は、もう消えていた。



「でも! 無謀すぎる! 自分の命をもっと、大切にして。リアは、一人しかいないんだ。リアがいなくなったら、悲しむ人だっている」

「……?」

「ティノがいなくなったら、ティノのお母さんが悲しむように、リアもいなくなったら、悲しいんだよ」

「誰が?」

「母さんやきっとミナも……。俺だって……!」

「そうなんですね。悲しい思いはしてほしくないです」

はぁ〜と大きなため息をついたイファは、
「リアは、俺の家族だから」と言って頭をポンポンと撫でる。



イファは、倉庫の周りにフェンスを置きはじめたので、リアも手伝った。
立ち入り禁止のテープを貼り、ホースを片付ける。

「……そうだ、なんで、こんなところにいたの?」

リアは視線を落とし、ぽつりと答えた。

「……アネモネの、花言葉を……調べたくて。近くの図書館に、来ていました」

イファは呆気に取られたような顔になった。

「……そっか……花言葉、か」

ははっと力なく笑うイファは、どこか、嬉しそうに見えた。

「花言葉、なんだったの?」

「……秘密です」


その言葉の奥で、リアは胸の内に残る、かすかな温かさを確かめていた。
もう光は消えているはずなのに、
胸の奥には、まだ小さな灯りが残っている気がした。

それが誰かに届いたのなら──
それで、よかったのだと思えた。