それでも、この世界で、光を


それからしばらく、三人は人混みを抜け、広場に設けられた舞台の前へと向かった。
舞台には、灯りを受けてきらめく水鏡が敷かれ、リゼットの舞を待つ人々でいっぱいだった。

「よーし! そろそろ、私の出番だ! 頑張ってくるね! きっと二人とも、わたしに見惚れちゃうよ〜! じゃ、またあとでね!」

リゼットは手を振って、舞台裏へと駆けていった。
リアとミナも舞台がよく見える場所を探す。

「ここならよく見えるかな」

ミナがそっとリアの腕を引いて、広場の石段に腰を下ろす。
すると、静かに音楽が流れ始めた。


舞台の中央には、白と青の衣をまとったリゼットが現れ、美しく舞う。
水のようにしなやかな動きは、彼女の美しさを際立たせていた。
光を受けて輝き、銀が散る。
まるで本物の水の精霊のようだった。

リアは目を見開き、息をするのも忘れるほど見入っていた。

「綺麗……」

「でしょ? リゼットは、踊ってる時が一番輝いてるのよ」

ミナが自慢気に言う。
そして、舞を見るミナが静かに口を開いた。


「──ねぇ、リア。わたしたちの約束、ちゃんと覚えてる?」

ミナはゆっくりと顔を向け、リアの瞳を見つめた。

「……手紙、書けた?」

「……はい。」

「そっか……よかった。わたしも、書いてきたわ。今年こそって思って……」

いつもハキハキと喋るミナの声は、少しだけ震えていた。

「去年は、できなかった。でも……あのとき、リアと約束したから。今年は、後悔したくないの……だから、ちゃんと、渡すわ」

リアはミナの手を、そっと握った。

「……きっと、大丈夫。……ミナの、気持ち、ちゃんと届くと思います。」

ふたりは視線を合わせた。


そのとき、リゼットが最後の舞を終え、静かな音楽がふたりの約束を包むように消えていった。

そして、空はゆっくりと色を変える。まだほんのり明るい空に、ひとつ、星が光る。




星灯の夜は、まだ始まったばかり。