数日が経ったある日。
いつもなら、誇らしげに紺色の制服に袖を通すイファが、今日はゆっくりとコーヒーを飲んでいた。
「……今日はおれ、仕事……休み」
イファは照れくさそうに、独り言のようにぽつりと告げる。
横目でリアを見ると、きょとんとしていて、
イファは慌ててコーヒーを飲み干し、キッチンへ向かった。
「ねぇ、イファ。今日はお家で静かに、編み物をしたい気分なの。お天気もいいし、たまには二人でお出かけでもしてきたら?」
にこやかに笑うマリナの言葉で、二人は一緒に出かけることになった。
春の光はやわらかく世界を照らし、鳥たちのさえずりはどこか浮かれたようだった。
リアは、小さなカゴを持って、イファの横を歩く。
カゴに入っているものは、マリナが持たせてくれたサンドイッチ。
何気ないことが、今日は少しだけ特別に感じられた。
向かう先は、リアが倒れていた森。
あの日の記憶は曖昧で、靄のかかったようにぼやけていたけれど、イファの「大丈夫、今日は怖くないよ。」という言葉が、彼女の心を軽くしていた。
森の奥へ、ゆっくり歩く。
木々の間を風が走り、心地よい音を立てる。
ふわりと香る太陽の匂いが、二人に春を連れてくる
