陽が傾きはじめた夕暮れ、リアは家の裏手、小さな庭の隅にアネモネを埋めた。
ひとさじの土をかけながら、ぽつりとつぶやく。


「……あなたが、ここにいてくれたから……。とても、綺麗でした。」


風がそっと、リアの頬をなでた。


──アネモネはとても美しく、生きていた。
──私も、今ここで生きている。



その夜、ベッドに横たわるリアは、胸に手を当てて、マリナが教えてくれたことを何度も、何度も考えた。



限りある命だからこそ、美しい。



胸がきゅっと締め付けられる感覚を忘れないように。

そして、次に咲く花に出会ったとき。

今度はきっと、
もっと、素直に、
綺麗だと言えるように。