太陽が沈み、町が陰ってきた頃、三人は食卓を囲んで、夕食をとっていた。
マリナとリアが作ったジャガイモのドフィノワの香りが部屋にふんわりと広がっている。

そのとき、不意にイファを見てリアがためらいがちに言葉をこぼす。

「……お花、とても綺麗です。」

イファは手を止めて、びっくりしたようにリアを見た。
そして、少し顔を赤らめながら、照れたように笑って言った。

「……そっか。よかった」

小さく言葉を落とすと、カップに入っていた水を飲み干した。
そして、さっと席を立ち、台所へ逃げるように歩いていった。

その背中を見て、リアは不安そうに眉を寄せ、「……よくなかった、でしょうか。」と、ポツリと、つぶやく。
マリナは微笑みながら、リアに伝えた。

「いいえ、あの子、すごく、すごく嬉しかったのよ。きっと、ちょっと、照れているだけね」

ニヤリと笑ったマリナの言葉を聞いて、リアは、ほっとした。

「……伝えるって、むずかしい。」

「ふふふ。そうね。でも、ちゃんと伝えようとしてる。それだけで、素晴らしいことなのよ」

リアは、そっとうなずいた。



遠くでフクロウの鳴く声がする。
月が輝く。


リアは、なんだか、胸のあたりがあたたかくなり、食卓の上のアネモネを見た。


この気持ちは、なんだろう──
分からない。
でも、心地いい。



ほんの少し、胸の奥が、ぽうっと灯るようなあたたかさだった。