(大袈裟な⋯⋯)


そう思いながらも、災害級の暑さにおいて、冷房の効いた店内へと誘導した私は、確かに彼からすれば救世主に値するかもしれないとも思った。

それほどまでに、彼の白い肌は太陽の熱で赤みを帯びていたのだ。


「春日井も行く?」
「いや、私は大丈夫」
「了解」


冷房の効いた店内へと吸い込まれて行った森崎くんの背中をぼんやりと眺めていたが、はたと我に返る。


(あれ⋯⋯これってこのまま待ってるべき? それとも待ってたほうがなんか気まずくなるやつ……?)


今さらながら私は、元同級生との偶然の再会に戸惑い始めていた。


――森崎 (しゅん)


彼とは中学が同じだった。といっても正直それだけだ。

クラスが一緒になったことも、一対一でまともに会話したこともない。

平凡より下にいる私と違い、森崎くんは当時から注目を集める人だった。

彼のお父さんが何某かの社長でお金持ちだ、という噂も聞いていたし、彼自身も頭が良くて、運動もできるときた。3年の頃には生徒会長を務めるほどに人望もあったし、背も高くて目鼻立ちが整っていた。

そんな彼はごく当然のように、地元では有名な私立高校の進学校へと進んだ。

むしろ、なぜそんな彼が私を覚えていたのか。そちらの方が驚きだった。

昔の思い出と考えに耽っていたせいで、私の判断が定まらないうちに、森崎くんが戻ってきてしまった。冷房で頭が冴えたのか、彼は先ほどまでとは打って変わって、すっきりとした顔だった。


「春日井お前すげーな。2本買っても自販機より安いんだけど」