《昨日に引き続き、西日本では雷を伴った激しい雨に注意が必要です》


森崎くんと〈憩いの場〉でお昼を食べながら、テレビから流れる天気予報を眺めていた。


「こっちはこんなに晴れてんのにな」


隣で肉弁当を食べていた森崎くんは、白々しいと言わんばかりの視線を窓の向こうへと向ける。

彼の顔にあった青痣は日に日に姿を消していき、今はもう薄っすらとしか見えなくなっていた。

そして、その痣が消えていく日々を、私は毎日、この場所で見ている。

森崎くんはあの日からどこか吹っ切れたような様子だけれど、遅めの反抗期とやら未だ継続中のようで、今日も塾を通り過ぎて〈憩いの場〉へ来ている。


「今日も良い天気だもんね」


私も森崎くんと同じように外を見ながら言った。

空はどこまでも青く、点々と浮かぶ真っ白な雲もゆったりと風に流されて景色を変えている。


「俺、入道雲好きなんだけど、今年あんま見てねえ気がする」


今日も太陽は眩いほどに爛々と地上を照らし続けている。


「ほんとだね。雨、全然降んないもんね、今年」


よかった、と素直に思う。

災害級のこの暑さも考えものだが、夏の雨ほど嫌なものはない。

そんなことを考えていた私に、森崎くんの声が滑り込んでくる。


「梅雨らしい梅雨もなかったし、農業やってる人とか大変だろうな」


さらりと零された森崎くんの言葉に、私はとっさに「そうだね」と相槌を打った。

けれど、内心ではひどく気後れしていた。


(こういうとき、森崎くんは自分じゃない誰かのことも考えられるんだ)