私が恐縮しながら受け取ると、店長はもう癖になってしまっているような困った顔で笑って、隣の森崎くんを一瞥する。
「ふたつあるやつ選んだから、お友達? も、一緒に食べてね。外暗いからふたりとも気をつけて帰るんだよ」
「ありがとうございます」
「いただきます」
ふたりでお礼を言えば、店長は「こちらこそこちらこそ」と早口で言いながら、小走りで店へ戻っていく。
いつも余裕がなさそうで、忙しい時に店長の慌ただしい姿を見ると、こちらまで感化されて疲れることがあるけれど、それが店長である。
森崎くんと顔を合わせる。
今日、初めてきちんと目があった気がする。
まさに嵐のような店長に、森崎くんも困惑しているのがその表情から読み取れた。
「せっかくだから、溶けちゃう前に食べよ」
2本が繋がっているチューブ型のアイスを外して、1本を森崎くんに渡す。
「⋯⋯さんきゅ」
森崎くんが受け取ってくれたことに安堵しつつ、私はまず先にチューブの蓋部分に詰まったアイスを、歯でぐいっと引き抜いて食べた。
「うちの店長、なんか面白いでしょ?」
そう言いながら、ちらと隣の彼を見る。森崎くんは蓋側のそれは食べない派らしい。
「うん、なんか優しいひとだな」
森崎くんの言葉に、私も「うん」と首肯する。
スーパーで働く人たちの店長の評価は、どんくさい、頼りない、いらいらする、仕事できない、と散々だ。
「私も優しくて善いひとだと思う」
だから、森崎くんが店長のことを優しい人だと言ってくれて嬉しかった。私もそう思っていたから。
ふたりで同じものを食べながら、私の自転車がある駐輪場へとなんとなく歩き出す。
――お友達? も、一緒に食べてね。
店長の言葉を思い出す。柔らかな気持ちが、するりと胸のうちに落ちてくる。
「⋯⋯私たち、お友達、だよね?」
その柔らかな気持ちに背中を押され、私は店長に訊ねられた関係を、そのまま森崎くんに訊ねてみる。
「うん」
彼は、迷うことなく、頷いた。
お揃いのアイスをくわえて、ふたり並んで歩く。
アイスの優しい甘みに釣られて、私は気持ちをそのまま呟いた。
「なんか嬉しいな」
「うれしい?」
ほんのりと優しい甘みがやっぱり身体に染み込む。
