裏口から外へ出る。その眩しさに思わず目を細めた。身体に纏わりついていた冷気が一瞬にして熱気に呑み込まれていく。
反射的に顰め面になった顔で、空高く昇った太陽を恨めしく見上げる。雲ひとつない晴天。無風のせいで地上に籠りきった熱に、肌を刺すような直射日光。
「あー⋯⋯あっつい」
うんざりとした声が溢れた。
代り映えのない毎日。今日もバイトして家に帰って、家の手伝いをして、明日もバイトに行って、そうやって私の夏はあっという間に終わる。
「つまんない」
夏だけじゃない。秋も、冬も、春も、来年も、再来年も、ずっと、これから先も、私の人生は、苦しいくせにつまらなくて、頑張ったところで、ままならないのだ。
まるで、息絶えはしないけれど、息切れが永遠と続く、緩やかな坂のように。
爛々と煌めく太陽に隠れるようにして、日陰を選んで駐輪場へ向かう。吸い込んだ空気にさえも熱気がこもっていて、辟易とする。その感情に誘発されて、先ほどの会話が無意識に思い起こされる。
『やりたいことがあるならやっておいたほうがいいわよ』
ロッカーの中に閉じ込めたはずのものが、どろりと垂れ落ちる。
(やりたいことなんてない)
できることなんてない。
だからこそ、いつも、世界がひっくり返るような、劇的な何かを渇望している。
(こんなつまらない毎日から抜け出せるなら、なんでもいい)
結局、お昼時の駐輪場は日向になっていて、日陰を探し選んで進み続けたのが馬鹿みたいだった。
自転車の黒いサドルは火傷しそうなほど熱くて、溶けるように項垂れた。
「――今すぐ隕石落ちないかな」
叶いもしない願望を、呟いてみる。
