「嫌じゃない」


自然とそんな言葉が、私の口から零れ落ちていた。私の答えを聞いて、森崎くんは安堵したように、白い歯を見せて笑った。


「春日井が話して楽になるなら、なおさら聞かせてほしい」


森崎くんの柔らかな声に、喉の奥がきゅっと苦しくなった。思わず唇を内側に巻き込んで、誤魔化した。

変だ。すっかり飲みこんだはずのお米が、喉にでも詰まっているのだろうか。

食べかけの塩むすびを見つめる。好きでも嫌いでもない味。それをひとくち齧るその前に、私は森崎くんへ、ぽつりと告げた。


「……ありがと」


一瞬、きょとんとした顔を見せた森崎くんは、次の瞬間には、はにかんでいた。


「いや俺べつになんもしてねー」


けらけらと笑う森崎くんに釣られて、私もちょっと笑う。やっぱり喉の奥はまだきゅっと苦しい。

苦しいのに、嬉しいなんて、やっぱり変だった。