満開の桜が舞い散る中、新入生たちがはしゃぐ声が聞こえる。どこか浮き足立った空気に俺までなんだか胸がくすぐられる。去年は俺もあの波の中にいたんだよな、とぼんやり思いながら渡り廊下を歩いていると暖かく柔らかな風が全身を撫でた。
遠くで走る音がした。いや、正確には遠くから駆け寄ってくる音がする。その足音の目的地がまさか、ここだとは思わなくて。
「りっちゃん!」
大きい声に思わず振り返ると同時に大きな胸板に視界が遮られた。
気がつくと俺は、足音の、そして大声の主に抱きしめられていた。
襲い来る体温に驚いて声にならない悲鳴を上げるとそいつは、でっかい身体にぴったりのでっかい手で俺の肩を掴んで身体から離した。それと同時に大きな瞳が俺の目を真っ直ぐ見つめる。
キラキラと太陽のような笑顔が眩しい。自然に日の光が透けるような少し明るい髪が印象的だ。
犬だったらしっぽをちぎれんばかりに振っているであろう満面の笑みでそいつはこう言った。
「俺だよ、大翔。久しぶり、同じ高校だなんて、俺りっちゃんが見えて、すごい走っちゃって、」
「落ち着け、まず落ち着け。大翔!?え、あの?」
「なんだよ、俺以外にヒロトが居るわけ?そりゃそんなに珍しい名前じゃないとは思うけど……」
慌てて話し出したと思ったら今は文句ありそうな顔をしているこの忙しい男は大翔と名乗った。
ーー俺の記憶の中のヒロトはたった一人だ。
小学生の頃に近所に住んでいて、いつも俺をりっちゃんりっちゃんと追いかけてきていた可愛い弟分。そりゃもう子犬みたいなキラキラした目でどこでも付いてきて、りっちゃんすごい!かっこいい!とずーっと言っているような一学年下の小柄な少年だったはずだ。
そう、小柄で可愛らしい、少年だったんだ。
でも今、目の前に居るのは・・・・・・どう間違っても子犬ではない。犬の中でもかなり大きい、例えるならラブラドールレトリバーの様なサイズ感の新入生だ。悔しいが俺よりも頭一つ分は確実に大きい。
改めてまじまじと顔を見る。俺の記憶とは随分違うが……まぁ面影があると言えばあるか。
「りっちゃん、俺こっちに戻ってきたんだよ。大学はわかんないけどひとまず三年間はこっちに居るからよろしくね」
「お、おう」
深く考えるのは止めよう。大翔が大翔と言うんだから、この失礼で、挙動不審とも言える新入生は大翔なのだ。
大翔は、あの頃とおなじ笑顔で俺を見つめた。
俺はあの頃とは違う何だかくすぐったい様な、恥ずかしい様な、それでいて嫌ではない感情になった。
遠くで走る音がした。いや、正確には遠くから駆け寄ってくる音がする。その足音の目的地がまさか、ここだとは思わなくて。
「りっちゃん!」
大きい声に思わず振り返ると同時に大きな胸板に視界が遮られた。
気がつくと俺は、足音の、そして大声の主に抱きしめられていた。
襲い来る体温に驚いて声にならない悲鳴を上げるとそいつは、でっかい身体にぴったりのでっかい手で俺の肩を掴んで身体から離した。それと同時に大きな瞳が俺の目を真っ直ぐ見つめる。
キラキラと太陽のような笑顔が眩しい。自然に日の光が透けるような少し明るい髪が印象的だ。
犬だったらしっぽをちぎれんばかりに振っているであろう満面の笑みでそいつはこう言った。
「俺だよ、大翔。久しぶり、同じ高校だなんて、俺りっちゃんが見えて、すごい走っちゃって、」
「落ち着け、まず落ち着け。大翔!?え、あの?」
「なんだよ、俺以外にヒロトが居るわけ?そりゃそんなに珍しい名前じゃないとは思うけど……」
慌てて話し出したと思ったら今は文句ありそうな顔をしているこの忙しい男は大翔と名乗った。
ーー俺の記憶の中のヒロトはたった一人だ。
小学生の頃に近所に住んでいて、いつも俺をりっちゃんりっちゃんと追いかけてきていた可愛い弟分。そりゃもう子犬みたいなキラキラした目でどこでも付いてきて、りっちゃんすごい!かっこいい!とずーっと言っているような一学年下の小柄な少年だったはずだ。
そう、小柄で可愛らしい、少年だったんだ。
でも今、目の前に居るのは・・・・・・どう間違っても子犬ではない。犬の中でもかなり大きい、例えるならラブラドールレトリバーの様なサイズ感の新入生だ。悔しいが俺よりも頭一つ分は確実に大きい。
改めてまじまじと顔を見る。俺の記憶とは随分違うが……まぁ面影があると言えばあるか。
「りっちゃん、俺こっちに戻ってきたんだよ。大学はわかんないけどひとまず三年間はこっちに居るからよろしくね」
「お、おう」
深く考えるのは止めよう。大翔が大翔と言うんだから、この失礼で、挙動不審とも言える新入生は大翔なのだ。
大翔は、あの頃とおなじ笑顔で俺を見つめた。
俺はあの頃とは違う何だかくすぐったい様な、恥ずかしい様な、それでいて嫌ではない感情になった。
