翌日の放課後、大志は宣言通り教室にやってきた。大志の顔を見た途端、昨日の事故チューの情景がありありと思い出される。顔が熱くなって、体温が急上昇した。
「那月さ~ん」
廊下から元気よく弾ける笑顔で名前を呼ばれ、俺は反射的にしゃがみ込んで背中を丸めた。まだ教室には同級生たちが残っている。気付かれていない可能性にかける。
「那月さ~ん!」
大志は両手を振ってジャンプしながら俺を呼んでいる。大柄であるため、通りがかりの二年生たちがびっくりしている。
「春田。後輩が呼んでるぞ」
机の陰に隠れていた俺に、クラスメイトが声をかけてきた。大志も俺の居場所に気付いているらしい。さっきから目が合っている。
俺は長息しつつ立ち上がった。大志にじとーっとした視線を送る。
(しっぽの幻覚が見えそうだ)
大志は大型犬のごとく全身で喜びを表現している。
(どうやったら昨日の今日で、そんなに明るく振舞えるんだよ)
俺は心の中で舌打ちした。
(意識してんのは俺だけかよ)
「那月さん! 今日からよろしくお願いします!」
同級生がいなくなった教室で、大志は行儀よくお辞儀をした。
「お、おう」
俺はとにかく恥ずかしくて、大志の顔を直視できない。意味もなく動悸が激しくて、内臓までそわそわしているみたいだ。
「那月さん? どうしたんすか?」
大志が顔を近付けてきて、俺は心臓が止まるかと思った。
「顔、赤いっすよ」
何が起こったのか、一瞬わからなかった。大志の冷たい手が俺の額を覆っている。
「マジで熱あるかもしれないっすよ」
大志の声は焦っていた。俺の緊張もピークに達する。
俺は俊敏な動きで後ずさりしていた。大志が驚きに目を見張っている。俺は慌てて取り繕った。
「あー、俺、ちょっと、体調悪いかも」
すばやくボストンバッグを肩にかける。
「悪い! 自力で勉強してくれ!」
捨て台詞のように言い残して、小走りで教室を出た。
「那月さん! 気にしないでください。俺ちゃんと勉強します!」
俺はハッとして振り返った。大志の無理やり張り付けた笑顔に胸が重苦しくなる。俺は返事もできずに、廊下を足早に移動する。
(あー! またやっちまった! すまん、大志!)
「那月さ~ん」
廊下から元気よく弾ける笑顔で名前を呼ばれ、俺は反射的にしゃがみ込んで背中を丸めた。まだ教室には同級生たちが残っている。気付かれていない可能性にかける。
「那月さ~ん!」
大志は両手を振ってジャンプしながら俺を呼んでいる。大柄であるため、通りがかりの二年生たちがびっくりしている。
「春田。後輩が呼んでるぞ」
机の陰に隠れていた俺に、クラスメイトが声をかけてきた。大志も俺の居場所に気付いているらしい。さっきから目が合っている。
俺は長息しつつ立ち上がった。大志にじとーっとした視線を送る。
(しっぽの幻覚が見えそうだ)
大志は大型犬のごとく全身で喜びを表現している。
(どうやったら昨日の今日で、そんなに明るく振舞えるんだよ)
俺は心の中で舌打ちした。
(意識してんのは俺だけかよ)
「那月さん! 今日からよろしくお願いします!」
同級生がいなくなった教室で、大志は行儀よくお辞儀をした。
「お、おう」
俺はとにかく恥ずかしくて、大志の顔を直視できない。意味もなく動悸が激しくて、内臓までそわそわしているみたいだ。
「那月さん? どうしたんすか?」
大志が顔を近付けてきて、俺は心臓が止まるかと思った。
「顔、赤いっすよ」
何が起こったのか、一瞬わからなかった。大志の冷たい手が俺の額を覆っている。
「マジで熱あるかもしれないっすよ」
大志の声は焦っていた。俺の緊張もピークに達する。
俺は俊敏な動きで後ずさりしていた。大志が驚きに目を見張っている。俺は慌てて取り繕った。
「あー、俺、ちょっと、体調悪いかも」
すばやくボストンバッグを肩にかける。
「悪い! 自力で勉強してくれ!」
捨て台詞のように言い残して、小走りで教室を出た。
「那月さん! 気にしないでください。俺ちゃんと勉強します!」
俺はハッとして振り返った。大志の無理やり張り付けた笑顔に胸が重苦しくなる。俺は返事もできずに、廊下を足早に移動する。
(あー! またやっちまった! すまん、大志!)
