自分のことはともかく、役に立つかどうかもわからないチームメイトのことを、俺は今日もノートにせっせと書いているのだ。
「そのノート、もう二冊目なんすよね」
「まあな。二年になってから、チームのことも書くようになったから。大志のことももちろん書いてるぞ」
「あざーすっ!」
いい加減だが親しみが込められた挨拶に、俺は相好を崩した。
「俺だけじゃなくて、他のみんなのことも書いてるんだったら、発表っていうか、ちょっとは言ってみたほうがいいんじゃないっすか? もったいないっすよ」
俺はノートから目を離さずに応える。
「う~ん。でも、俺なんかの意見聞いてさ、調子悪くなったら困るじゃん? 責任取れないし。俺、キャプテンでも副キャプテンでもないし」
「また謙遜して」
「謙遜っていうか」
顔を上げると、大志がワイシャツのボタンを留めていくところだった。うっすらと割れた腹筋が目に飛び込んできて、思わず目を逸らす。
(な、なんだこれ……なんでこんなに、俺、ドキドキしてるんだろう)
ほてったみたいに顔が熱くなって、心臓の音が聞こえそうなくらいバクバクしてる。
(自分で自分がわからない。毎日同じ部室で着替えてるのに、どうしてこんな反応になるんだ?)
「ノート書き終わりました?」
「あ? ああ」
大志が視界の端に現れ、一瞬びくっとする。学生服をちゃんと着ていたため、俺は少しほっとした。
俺が着替えだすと、大志は必ず背を向ける。
「あ、通知が……」
今日みたいにスマホをいじったり、カバンの中に手を突っ込んだりして、俺を見ないようにしている。
(そうだよな。これが普通の反応だよな)
うちは男子校ではないが、体育の授業や部活で、男子だけで着替える機会はいくらでもある。同級生や先輩の着替えなんかに興味を示さないのが、健全な男子高校生だろう。
着替えを済ませた俺は、大志と一緒に荷物を持って部室を出る。
施錠しようとしたその時――。
「那月さん」
「え?」
ふに。
冒頭に戻る。
「そのノート、もう二冊目なんすよね」
「まあな。二年になってから、チームのことも書くようになったから。大志のことももちろん書いてるぞ」
「あざーすっ!」
いい加減だが親しみが込められた挨拶に、俺は相好を崩した。
「俺だけじゃなくて、他のみんなのことも書いてるんだったら、発表っていうか、ちょっとは言ってみたほうがいいんじゃないっすか? もったいないっすよ」
俺はノートから目を離さずに応える。
「う~ん。でも、俺なんかの意見聞いてさ、調子悪くなったら困るじゃん? 責任取れないし。俺、キャプテンでも副キャプテンでもないし」
「また謙遜して」
「謙遜っていうか」
顔を上げると、大志がワイシャツのボタンを留めていくところだった。うっすらと割れた腹筋が目に飛び込んできて、思わず目を逸らす。
(な、なんだこれ……なんでこんなに、俺、ドキドキしてるんだろう)
ほてったみたいに顔が熱くなって、心臓の音が聞こえそうなくらいバクバクしてる。
(自分で自分がわからない。毎日同じ部室で着替えてるのに、どうしてこんな反応になるんだ?)
「ノート書き終わりました?」
「あ? ああ」
大志が視界の端に現れ、一瞬びくっとする。学生服をちゃんと着ていたため、俺は少しほっとした。
俺が着替えだすと、大志は必ず背を向ける。
「あ、通知が……」
今日みたいにスマホをいじったり、カバンの中に手を突っ込んだりして、俺を見ないようにしている。
(そうだよな。これが普通の反応だよな)
うちは男子校ではないが、体育の授業や部活で、男子だけで着替える機会はいくらでもある。同級生や先輩の着替えなんかに興味を示さないのが、健全な男子高校生だろう。
着替えを済ませた俺は、大志と一緒に荷物を持って部室を出る。
施錠しようとしたその時――。
「那月さん」
「え?」
ふに。
冒頭に戻る。
