「ああ。ちゃんと約束覚えてるから。安心していいぞ」
一週間後に迫った中間テストで赤点を取れば追試を受けることになる。土日に予定された練習試合に参加できなくなってしまうのだ。
インハイ予選の前に他校と試合ができる貴重な機会だ。もちろん出番があるかどうかはわからないが、試合を観るだけでも勉強になる。将来が楽しみな大志には絶対に参加してほしい。
「試合に出られるように頑張ってくれよ。大志が一番、タッパあるんだから」
「はい! 那月さんと一緒に出られるように頑張ります」
大志のキラキラした瞳に、俺は苦笑するしかなかった。
「俺は控えだから。どうせ出番ないだろうし」
大志は食い気味に顔を近付けてきた。
「そんなことないですって! 頼りにされてますよ! さっきだって褒められてたじゃないっすか。キャプテンもわざわざ残って練習に付き合ってくれてるんだし」
大志はそう言ってくれるが、現実問題、俺は二番手セッターだ。チーム内には、宇野さんという優れた三年生セッターが存在している。センスも技術も、空間把握能力も、何もかも俺よりも宇野さんが上なことは明らかだった。
一年間一緒にプレイしていたら嫌でも気付く。どんなに努力しても埋まらない圧倒的な才能の差が、確かに存在してるってことに。
(だからって、腐ったりはしないけどさ)
「ありがとうな。ほら、支柱運ぶぞ」
「はーい」
大志はまだ何か言いたそうだった。大志と一緒にいると、いつの間にか口元がほころんでいる自分に気付く。
(こういうのを、居心地がいいって言うのかな)
他にも後輩はいるのに、大志だけをひいきしていると言われても仕方がないくらいには、俺は大志に目をかけている気がする。
大志に注目しだしたのは、新入生が入部した直後の全体練習だった。一年生は小柄な子が多い。大志は、身長はもちろん声もずば抜けて大きかった。誰よりも真剣で、地味な練習にも真面目に取り組む姿に好感が持てた。屈託のない笑顔が図体のわりに犬みたいにかわいくて、いつの間にか目で追うようになっていた。
体育館から引き上げると、俺たちは部室で着替えてから帰る。着替える前に机に向かって練習ノートをつけるのが、俺の日課になっていた。
練習中は休憩時間にメモを取っている。メモを見ながら、忘れないうちに気付いたことや注意されたことをノートに書いていく。実際、大志と居残り練習する時は、大志にアドバイスできることが増えてきたように思う。
二年生になってからは、自分のことだけではなく、チーム全体のこともノートに書き込むようになった。
(俺の意見が役に立つことなんか、ないだろうけど)
一週間後に迫った中間テストで赤点を取れば追試を受けることになる。土日に予定された練習試合に参加できなくなってしまうのだ。
インハイ予選の前に他校と試合ができる貴重な機会だ。もちろん出番があるかどうかはわからないが、試合を観るだけでも勉強になる。将来が楽しみな大志には絶対に参加してほしい。
「試合に出られるように頑張ってくれよ。大志が一番、タッパあるんだから」
「はい! 那月さんと一緒に出られるように頑張ります」
大志のキラキラした瞳に、俺は苦笑するしかなかった。
「俺は控えだから。どうせ出番ないだろうし」
大志は食い気味に顔を近付けてきた。
「そんなことないですって! 頼りにされてますよ! さっきだって褒められてたじゃないっすか。キャプテンもわざわざ残って練習に付き合ってくれてるんだし」
大志はそう言ってくれるが、現実問題、俺は二番手セッターだ。チーム内には、宇野さんという優れた三年生セッターが存在している。センスも技術も、空間把握能力も、何もかも俺よりも宇野さんが上なことは明らかだった。
一年間一緒にプレイしていたら嫌でも気付く。どんなに努力しても埋まらない圧倒的な才能の差が、確かに存在してるってことに。
(だからって、腐ったりはしないけどさ)
「ありがとうな。ほら、支柱運ぶぞ」
「はーい」
大志はまだ何か言いたそうだった。大志と一緒にいると、いつの間にか口元がほころんでいる自分に気付く。
(こういうのを、居心地がいいって言うのかな)
他にも後輩はいるのに、大志だけをひいきしていると言われても仕方がないくらいには、俺は大志に目をかけている気がする。
大志に注目しだしたのは、新入生が入部した直後の全体練習だった。一年生は小柄な子が多い。大志は、身長はもちろん声もずば抜けて大きかった。誰よりも真剣で、地味な練習にも真面目に取り組む姿に好感が持てた。屈託のない笑顔が図体のわりに犬みたいにかわいくて、いつの間にか目で追うようになっていた。
体育館から引き上げると、俺たちは部室で着替えてから帰る。着替える前に机に向かって練習ノートをつけるのが、俺の日課になっていた。
練習中は休憩時間にメモを取っている。メモを見ながら、忘れないうちに気付いたことや注意されたことをノートに書いていく。実際、大志と居残り練習する時は、大志にアドバイスできることが増えてきたように思う。
二年生になってからは、自分のことだけではなく、チーム全体のこともノートに書き込むようになった。
(俺の意見が役に立つことなんか、ないだろうけど)
