話しているうちに怒りが再燃してきて、俺は唇を噛み締めた。
「『速攻もできないのか! 何年バレーボールやってるんだ!』って、みんなの前で怒鳴られました。俺、そいつに誘われて、小三からバレーボールしてるんです。やってる年数がほぼ同じなのわかってるくせにそんなこと言うから、俺、腹が立って、つい怒鳴り返しちゃって、『いい加減にしやがれ! エゴイストはチームにいらねえんだよ!』って」
フリーゾーンから見た光景がフラッシュバックする。途方もない無力感がよみがえる。空気に押し潰されて、自分の存在が消えたみたいだった。もうとっくに終わったことなのに、喉が絞めつけられるように痛んだ。
「ベンチに下げられたのは、俺のほうだったんです」
俺の声はかすれて震えていた。
「自己主張するセッターよりも、従順なセッターがいいんだって思うと、なんかもう、どうでもよくなったっていうか」
思考の泥沼に陥りかけた俺を、大志が引き上げてくれた。
「那月さんは間違ってないです。ぶち切れて当然っす!」
「そうだな。俺もそう思うよ。野球とかサッカーとか他のスポーツのことはわからんけど、少なくともバレーボールじゃあ、チーム全体のパフォーマンスが低下するって、俺も思うよ」
城戸さんが俺の肩に手を置いた。
「そんなにつらいことがあったのに、よくうちのバレーボール部に入ってくれたな」
俺は遠慮がちに口を開いた。
「去年見学に行った時、ずば抜けたスパイカーはいなさそうだったんで、やってもいいかなと思ったんです」
「はは」と城戸さんは苦笑している。ずば抜けたセッターがいるとすぐにわかったことは黙っておいた。
「那月、ちょっと」
城戸さんが、大志から離れたところで俺を手招きした。
城戸さんが声を潜める。
「那月、東山中学出身だよな。もめた相手って、赤羽高校の五十嵐か?」
「そうです」
赤羽高校二年生エースの五十嵐隼人とは幼馴染で、小一からの付き合いだ。連絡先は未だにスマホに登録されているが、中学最後の大会で口論して以来、連絡さえしていない。
赤羽高校との練習試合が、今度の土曜日にセッティングされている。
「まさかとは思うが、五十嵐に会いたくなかったから、わざと赤点取ったんじゃないだろうな」
俺は慌てて否定した。
「違います! 勉強に集中できなかっただけです」
城戸さんは咳払いをした。
「赤羽高校との練習試合には、ベストメンバーで臨みたい。二人ともなんとしても追試をパスしてくれ」
俺たちは姿勢を正した。
「はい!」
「『速攻もできないのか! 何年バレーボールやってるんだ!』って、みんなの前で怒鳴られました。俺、そいつに誘われて、小三からバレーボールしてるんです。やってる年数がほぼ同じなのわかってるくせにそんなこと言うから、俺、腹が立って、つい怒鳴り返しちゃって、『いい加減にしやがれ! エゴイストはチームにいらねえんだよ!』って」
フリーゾーンから見た光景がフラッシュバックする。途方もない無力感がよみがえる。空気に押し潰されて、自分の存在が消えたみたいだった。もうとっくに終わったことなのに、喉が絞めつけられるように痛んだ。
「ベンチに下げられたのは、俺のほうだったんです」
俺の声はかすれて震えていた。
「自己主張するセッターよりも、従順なセッターがいいんだって思うと、なんかもう、どうでもよくなったっていうか」
思考の泥沼に陥りかけた俺を、大志が引き上げてくれた。
「那月さんは間違ってないです。ぶち切れて当然っす!」
「そうだな。俺もそう思うよ。野球とかサッカーとか他のスポーツのことはわからんけど、少なくともバレーボールじゃあ、チーム全体のパフォーマンスが低下するって、俺も思うよ」
城戸さんが俺の肩に手を置いた。
「そんなにつらいことがあったのに、よくうちのバレーボール部に入ってくれたな」
俺は遠慮がちに口を開いた。
「去年見学に行った時、ずば抜けたスパイカーはいなさそうだったんで、やってもいいかなと思ったんです」
「はは」と城戸さんは苦笑している。ずば抜けたセッターがいるとすぐにわかったことは黙っておいた。
「那月、ちょっと」
城戸さんが、大志から離れたところで俺を手招きした。
城戸さんが声を潜める。
「那月、東山中学出身だよな。もめた相手って、赤羽高校の五十嵐か?」
「そうです」
赤羽高校二年生エースの五十嵐隼人とは幼馴染で、小一からの付き合いだ。連絡先は未だにスマホに登録されているが、中学最後の大会で口論して以来、連絡さえしていない。
赤羽高校との練習試合が、今度の土曜日にセッティングされている。
「まさかとは思うが、五十嵐に会いたくなかったから、わざと赤点取ったんじゃないだろうな」
俺は慌てて否定した。
「違います! 勉強に集中できなかっただけです」
城戸さんは咳払いをした。
「赤羽高校との練習試合には、ベストメンバーで臨みたい。二人ともなんとしても追試をパスしてくれ」
俺たちは姿勢を正した。
「はい!」
