幼い頃からの婚約者が居る時点で異世界でも数少ない上流階級確定だし、よっぽどの理由がないと婚約破棄なんかしないし……しかも、その後に相思相愛だったはずの人にすぐ振られるとか天文学的な確率でしか起こらないと思う。

 うん。彼が今居る立場って彗星が頭に直撃する程度の……低い確率なのかもしれない。

 慰めるどころの話ではないと気づき、思わず現実逃避したくなった私は、ああ綺麗だなと遠い目で夕焼けを見た。

 なんとなく、ここで黄昏ている殿下の気持ちがよくわかる。

 寄せては返す波の音もなんだかとっても良い感じだし、場所自体が苦しい日常を忘れさせてくれるような気がするのだ。

 もしかしたら、殿下の目にはあの雲辺りに自分のことを振った聖女の顔でも浮かんでるのかもしれない。

 うわ……何考えてるの。私ってひどい……殿下、可哀想。不憫だわ。萌え要素しかない。

 ロシュ殿下は私の話が終わったと判断したのか夕焼けに視線を戻したので、私はこれだけは聞きたいと思い彼に声を掛けた。

「あの……」

「なんだ?」