「いやいや、何があっても死んではいけないですよ……てか、たかが一回の失恋じゃないですか……人生長いですし、恋愛なんて何人かに振られて一人前じゃないですか……多分。うん。そう思います」

 なんて、前世にちょっと良いこと言う系の動画で聞いたことのあるような台詞で慰めるしかない。

 ちなみに私は前世から喪女だったので、失恋の経験はない。えせ知識なのは許して欲しい。上手いことを言えないのに慰めたいという、とても難易度の高いミッションに必死でチャレンジしてる。

 バッとこちらを振り返り、ロシュ殿下は半目になりつつ言った。

「お前には大広間のど真ん中で、幼い頃からの婚約者に婚約破棄し、その言い方が良くないと思うから、もう好きじゃなくなったと盛大にフラれた経験はあるのか?」

「あー……それはないですね。ごめんなさい」

 失礼なくらい立ち入ったことを言ったのに怒鳴りつけることなく淡々とした静かな物言いに、逆に怒りを感じて、私はしゅんとして小さくなった。

 普通の平民は、そもそも婚約しないし、絶対そんな状況はないんです。