この城の中でも現在一番に触れてはならぬ腫れ物である自覚はあったのだが、その彼女はずかずかと踏み込み王族であるはずの俺の事情を聞きたがった。

 なんだか、それが新鮮で面白いものだった。

 『王様の耳はロバの耳』という言葉を聞いた時、俺はその女の子の顔をよくよく見た。いいや……異世界から来たような顔ではない。

 もし、異世界から召喚されたなら、鼻は低く平べったい顔をしているはずだ。

 なぜそう思ったかというと、異世界からやって来た聖女サトミも同じ言葉を使っていたからだ。彼女から聞いた文脈通りの意味で使っているから、彼女は単なる平民ではあり得ない。ならば、絶対に結婚しろと息巻く親も認めてくれるだろう。

 だが、そんな彼女の事情に踏み込もうか……もしそうなら、俺とて覚悟を決めなければならない。

 顔はとても可愛いらしい。好みだ。はきはきとした物言いや、物怖じしない性格も好ましい……端的に言うと異性として、好きになれそうだ。

 恋をしたことのない男の良くわからない直感だ。彼女といたら幸せになれそうだ。別に外れても良い。