「知られたくない秘密を私に話したのは、そっちですよね?! いいえ。待ってください。もしかして……これって、全部……計算なんですか?」

 元婚約者と国を救ってくれた聖女を助けるために、ロシュ殿下はあれだけの大がかりの芝居を打ったのだ。

 だから、思いつきでなんて動くわけがないし……こうして失恋しているところを慰めに来た自分に興味のあるメイドを使って……国中の噂を消すつもり?

 待って……そうよ。

 どうして、ロシュ殿下は、こんなにわかりやすい場所で悲しんでいたの……? まるで……誰かの慰め待ちなんじゃない?

 もう……何もかも、もう信じられない。

 もしかしたら、まんまと彼の思惑通りに動いてしまったのではと思った私は、一歩後ろに後ずさった。ロシュ殿下は眉を上げて、一歩近寄った。

 まるで俺はお前を逃がさないよって、そう言いたげに。

「……さてね。それでは、可愛いメイドさん。俺と王族との身分違いの恋をしよう。きっと、これからの人生が楽しくなるよ」

 こ、これって……もう、私の運命が決まったってことだよね? だって、ロシュ殿下から、一介の平民が逃げられる訳もないもの。