「では、俺と結婚しよう。それが良い。ここでの懸念材料はすべて解決する。王族と平民の恋は何百年単位で久しぶりだから、国中の噂になって俺が振られたのどうのという噂はすぐに消えるだろう」

「いや、私が相手!? ままま、待ってください。それはちょっと。困ります!」

 当事者は絶対嫌なんですけど……だって、私は単なる城のメイドで、王妃になんて無理でなれないですって!!

「残念だ。秘密を知ってしまったからにはもう、お前をそのままにはしておけないんだが?」

 整った顔に浮かぶ悲しげな表情になんて、絶対に負けない。ここで頷けば大変なことになってしまうことはわかっていた。

 私は両手をぎゅっと握り、彼に言い返した。

「絶対、誰にも話しません! 大丈夫です。貝になります。ご心配なく」

「でも、貝ならば熱されれば口を開けてしまわないか? とても心配だ。結婚でもして、俺が直接君を見張るしかないな。」

 そんなこと深刻そうな顔で、余裕綽々なんて絶対おかしいよね! そうだ……この人、演技が上手かった!