真剣な眼差しに、それを聞く私だって真剣にならねばと大きく頷いた。

「殿下……それって、もしかして、私がここから始まる話を噂にしてばら撒けっていう振りだったりします? 正確にご指示してくれれば、明日には国中が知っている程度に広まるようにばら撒きます。お任せください。あ。初回ですし、成功報酬で良いですよ」

 現代知識はこういった異世界では、チート能力なのだ。それなりに役立てて来た私は、自信を込めて彼に微笑んだ。

「お前……面白いな」

 興味深い表情でしみじみとそう言ったロシュ殿下に、私はにっこり微笑んだ。

 これって、よくあるおもしれえ女の台詞じゃない?

 聖女に振られてしまった中身はどうあれ、外見は完璧な王子様に好意を抱く前触れの台詞を言われ私もなんだか気分は悪くはない。

「ふふ。ありがとうございます。私個人として身分違いの恋も受け入れる所存なので、どうぞよろしくお願いします」

 まぁ、メイドと王子様の恋なんて、この異世界では絵空事過ぎてあり得ないけどね。冗談でそう言った私に、ロシュ殿下は満足そうに微笑んだ。