トッ、……クルン――トッ。その身軽さは、猫の動きを彷彿とさせた。
三m程の壁を二段蹴りで登り、十mもの高度を背面宙返りで着地する。
パルクールの基本的な身のこなしは、成長の過程で体が自然に覚えた。
「……ぜぇ、……」
暗闇の中、冷たい汗が冷えた夜霧に、白い蒸気を発し立てて霧散する。
俊足のウェイキンは反射神経に優れ、ボディ・バランスに長けていた。
謎の追跡者達は、障害物を楽々と越えてゆく標的を呆気無く見失った。
『追っては撒いたぁ?』
「さぁな……ぜぇ……」
『撒いたんだ……なら』
プッ――。
インカムから随時流れていたノイズ音が不意に途切れる。直後――。
わぁ――っ。パパパパ……。ゴッ。ガッ。ドゴォッ!!
遠方で喧噪が不意に湧き立ち、罵声と発破音。破壊音が鳴り渡った。
「……?」
再度の静謐が訪れたのは、街路樹を背に呼吸を整えていた時だった。
『ウェイキン。聞いてる?』
「あ? ……あぁ……」
パカッ。検めた端末の赤いカーソルは現在地の近傍を点滅している。
発信器の取り付けられたケースがまだ近くにある、という事になる。
「聞いたか? さっきの怒号……」
『いいわ。現在地より三ブロック先の角を右折して』
質問を遮って、インカムからの声はウェイキンを手際よく誘導する。
『五ブロック真っすぐ進み、三叉路で左折』
「チッ……、こっちの質問にも答えろよな……」
時折後ろを振り返り追っ手の不在を検めながら、女の指示通り進む。
三m程の壁を二段蹴りで登り、十mもの高度を背面宙返りで着地する。
パルクールの基本的な身のこなしは、成長の過程で体が自然に覚えた。
「……ぜぇ、……」
暗闇の中、冷たい汗が冷えた夜霧に、白い蒸気を発し立てて霧散する。
俊足のウェイキンは反射神経に優れ、ボディ・バランスに長けていた。
謎の追跡者達は、障害物を楽々と越えてゆく標的を呆気無く見失った。
『追っては撒いたぁ?』
「さぁな……ぜぇ……」
『撒いたんだ……なら』
プッ――。
インカムから随時流れていたノイズ音が不意に途切れる。直後――。
わぁ――っ。パパパパ……。ゴッ。ガッ。ドゴォッ!!
遠方で喧噪が不意に湧き立ち、罵声と発破音。破壊音が鳴り渡った。
「……?」
再度の静謐が訪れたのは、街路樹を背に呼吸を整えていた時だった。
『ウェイキン。聞いてる?』
「あ? ……あぁ……」
パカッ。検めた端末の赤いカーソルは現在地の近傍を点滅している。
発信器の取り付けられたケースがまだ近くにある、という事になる。
「聞いたか? さっきの怒号……」
『いいわ。現在地より三ブロック先の角を右折して』
質問を遮って、インカムからの声はウェイキンを手際よく誘導する。
『五ブロック真っすぐ進み、三叉路で左折』
「チッ……、こっちの質問にも答えろよな……」
時折後ろを振り返り追っ手の不在を検めながら、女の指示通り進む。

